海洋プラスチックごみ問題
海洋へのプラスチックごみ(プラごみ)の流入が心配されている.2016年世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)では,年間少なくとも800万トンのプラごみが海洋へと流れ込んでいると報告された.このままで行くと,2050年には魚の総重量よりもプラごみの方が多くなるという.このプラごみは流れにより流入した海域を離れて広い海域に拡散する.その汚染は日本沿岸も例外ではなく,異国の言葉が印字されたプラごみが多数漂着している.プラごみ問題でさらに厄介なのは,海洋を移動する中で,表面の波や流れによって砕けたり(物理的破壊),太陽からの紫外線によって砕けたり(化学的破壊)して,小さくなっていくことである.プラごみのうち大きさが5o以下のものをマイクロプラスチック(MP)と呼ぶ.また,化粧品の一部にはマイクロビーズと呼ばれる小さな球状プラスチックが使用されており,さらには,私たちが来ている衣類からも洗濯などによってプラスチック繊維が破片となり,これらも最終的には海に流入する.

これらのMPは,既に多くの魚や貝の体内に入っていることが確認されている,厄介なことに,MPは化学物質との親和性が高いと言われ,実際,MPの表面には有毒なポリ塩化ビフェニル(PCB)などの有害化学物質が付着していることも報告されている.今までのところ,MPの存在で魚や貝の生存を阻害しているとの報告はないが,大きな懸念材料となっている.

今月(2018年6月)8・9日にカナダで開催された主要七か国首脳会議(G7サミット)の「G7シャルルボワ首脳コミュニケ」にも,この問題が次のように謳われた.「我々は,『健全な海洋及び強靱な沿岸部コミュニティのためのシャルルボワ・ブループリント』を承認し,(略)海洋のプラスチック廃棄物や海洋ごみに対処する.プラスチックが経済及び日々の生活において重要な役割を果たす一方で,プラスチックの製造,使用,管理及び廃棄に関する現行のアプローチが,海洋環境,生活及び潜在的には人間の健康に重大な脅威をもたらすことを認識し,我々,カナダ,フランス,ドイツ,イタリア,英国及び欧州連合の首脳は,『海洋プラスチック憲章』を承認する」(外務省ウェブサイトより).

最後の文章にあるように,残念ながら我が国はこのサミットで提案された「海洋プラスチック憲章」に米国とともに署名しなかった.これに対し,後ろ向きの対応ではないかとの声が,内外の多数の個人や団体から上がっている.このプラごみ問題は,地球温暖化問題と同様.全世界の国々が一致して対応すべき問題であることは言をまたず,我が国も世界をリードするくらいの姿勢で対応したいものである.


2018年6月20日記


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