科研費申請書の書き方
この(2018年)7月,理学研究科教育研究支援部を統括するMさんと,評価分析・研究戦略室のURA(University Research Administrator)であるTさんから,「平成30年度科学研究費研究計画調書作成助言者」への就任を頼まれた.科研費の採択率を上げることを目的とした取り組みで,今年度から始まった.私自身が科研費を申請したのはかなり前のことで,最近の科研費を巡る状況にはまったく疎い.とは言え,科研費を仕切る日本学術振興会の学術システム研究センターの委員を務めたこともり,何とかなると思い引き受けることにした.

その後,昨年申請して不採択だった数件の申請書が送られてきた.どこが採択に結びつかなかったのか,どうすればいい申請書になるのかの意見を聞きたいという.読んでみると,確かに欠点があるように思えた.どの申請書も,読んですぐには申請者の意図するところを捉えられなかったのである.テーマそれ自身の良し悪しはさておき,申請書の書き方のところで工夫の余地があるように思えた.それらを一般化すれば誰にでも役立つアドバイスになるのではないかと思い,書く前に読んでもらうメモを準備することとした.以下,その概要である.

なによりも審査員の立場に立った申請書を作成すること.審査員は同じ分野とは限っておらず,分野外の人も理解できるよう,業界用語の多用などは避ける.審査員は短時間で多数の申請書を読まなくてはならない.詳しく書けばいいとして,申請書を文字で埋め尽くしては逆効果.大事なところを下線などで強調することはいいが,やりすぎても逆効果.研究の背景,具体的計画,波及効果のところは申請書の肝.審査員が読んで即座に理解できるよう,ロジカルに項目を立てて書くこと.背景には研究のレビューとともに課題を明瞭に指摘し,申請する研究で解決することを述べる.研究計画では,いつまでに,最低限どこまでやるかを具体的に.波及効果は過大に書く必要はないが,本研究はブレークスルーする研究であり,波及効果が大きいことを述べる.経費は必要かつ最小限の計上とする.什器類には使えない,パソコン等の要求もできるだけ控える.成果発表旅費の過剰な計上も考えもの.

大学の運営費交付金はここ十数年減額され続けている.学内で教員へ措置される予算(講座運営費や研究費)も減額され続け,大学によっては自由に使える予算は無きに等しい状態となった.このような状況なのでどの大学でも研究費を外部から調達することが要請されている.産業界との結びつきが強い分野ならいざ知らず,理学系は科研費に頼らざるを得ない.今やほとんどの研究者が申請する状態となり,以前よりも厳しい競争となっている.申請者は採択に向けて,最大限の努力をするのは当然である.


2018年9月20日記


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