極端で影響の大きい気象現象で2019年が始まる
世界気象機関(WMO)のウェブサイトに,2月1日,「2019 starts with extreme, high-impact weather」と題する記事が掲載された.南北両半球で,年明け早々記録を塗り替えるような極端現象が起こっているという報告である.北米では極渦からの寒気の流出で大寒波に見舞われた.ミネソタ州南部では1月30日に,それまでの記録-48.9℃を大きく下回る-53.9℃の体感気温を記録した.カナダのオタワでは1月29日に97cmという過去最高の積雪となった.ヨーロッパ・アルプスでも記録的な積雪となり,オーストリア・チロルでは1月の前半で451cmに達し,100年に1度の極端現象とみなされた.一方でアラスカや北極域は,平年よりも高い気温で推移した.

南半球オーストラリアのタウンズビルでは1月の9日間で1年分の降水があり,洪水が発生し数百名もの住民が避難する騒ぎとなった.オーストラリア南部にも,これまでにない規模と継続期間で熱波が襲った.1月24日にはアデレードで46.6℃になるなど,各地で最高気温の記録が更新された.タスマニアでの中央部から南東部では,1月28日に44か所で火災が起こり,4万ヘクタール以上が焼失した.南米各地にも熱波が襲った.チリの首都サンチャゴでは1月26日に38.3℃の最高気温となったのをはじめ.多くの場所で最高気温を塗り替えた.

この記事には,WMO事務局長のP. ターラス氏の北米への大寒波襲来に関するコメントを掲載している.「米国東部の寒波は,(温暖化という)気候変化を否定するものでは決してない.一般に全球レベルでは,温暖化の結果,最低気温の記録更新は次第に少なくなっている.しかし,極寒の気温や降雪は,北半球冬季の典型的な気象パターンの一つとして今後も起こるであろう.私たちは,短期の日々の気象と長期の気候とを区別する必要がある.」「北極は全球平均の2倍の温暖化に直面してきた.この領域の雪や氷はかなりの部分が融解した.これらの変化が,北半球の極以外の気象パターンにも影響している.低緯度の低温偏差の要因一部は極域の劇的な変化と関係あるだろう.極域で起こっていることは,何億人もの人が住んでいる低緯度の気象や気候に影響を与えているのである.」

ターラス氏も指摘しているように,北極域では現在海氷面積が急速に減少している.とりわけ夏季の面積,すなわち1年の最小面積の減少が著しく,近年は1980年代の半分の面積までになっている.太陽光をほとんど反射する氷で覆われていた場所が,太陽光のほとんどを吸収する海面になるという大きなアルベド(反射率)の変化が,どのような影響を大気に与えるのかは.まだ十分には分かっていない.この問題は気象・気候・海洋研究者が抱える最も喫緊で重要な課題の一つであることは間違いない.


2019年2月20日記


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