プラスチックごみ問題
東京農工大学の高田秀重先生は,我が国でいち早く海洋プラスチックごみ(プラごみ)・マイクロプラスチック(MP)問題を研究されて来られた方である.この高田先生の講演資料をインターネットで見ることができる.例えば「マイクロプラスチックって何だ?」(URL@)や「マイクロプラスチック汚染:地球規模での汚染,継時的トレンド,解決への方向性」(A)など.その中で,MP問題は21世紀の環境問題であり,海洋プラごみ汚染は,気候変動,海洋酸性化,生物多様性と並んで最も重要な地球規模環境問題であると述べている.なお,先生は2001年度から2006年度まで,日本海洋学会海洋環境問題研究会の会長を務められた.

最近,MPは海洋だけでなく大気中にも漂っており,広範囲に拡散されていると報じられた.フランスやイギリスの研究者たちが,大都市から遠く離れたピレネー山脈における数か月にわたる観測から,1平方メートルに1日当たり平均365個のMPが降っていると報告したのである(Nature Geoscience,2019年4月15日発行).採取されたMPは,直径が10〜50マイクロメートルで,破片,繊維,シート状の薄い膜などが見られたという.この個数は,大都市パリで報告されている測定値と同程度とのことである.

空気中には多くの繊維状MPが漂っているとのことだが,その原因は衣類などに使用される化学合成繊維の破片である.衣類にはポリエステル繊維が多く使われているが,丈夫で,吸湿性が低く乾きやすく,しわや型崩れがしないこと,カビが発生しにくく虫にも食われることがないことなど多くの長所があるという.しかし,ちぎれて空気中に漂い,とりわけ洗濯時には多くの繊維がちぎれて排水されることになる.これらの繊維は小さすぎて下水処理場では除去されず,最終的には海へと流出する.

さて,私たちはプラごみ・MP問題にどう対処すればいいのだろうか.使用の中止が一番であるが,現実には直ちにはできないことである.そこで,日常生活ではできるだけ使用を抑える努力が求められる.例えば,マイバックを持参し,レジ袋を利用しないなど.コンビニをあまり使うことがない私だが,最近はコンビニにもマイバックを持参し,レジ袋をもらわないようにしている.そして衣類であるが,できるだけ綿や羊毛のものなど,自然由来素材のものかどうかを気にするようになった.もっともこのような個人の努力だけでは問題の解決には覚束ない.行政的なトップダウンの施策が求められる.今月末に大阪で開催されるG20では,海洋プラごみ・MP問題への対応方策が日本主導で議論されるという.これが歴史上大きな一歩となることを切に期待したい.
@ https://web.tuat.ac.jp/~gaia/item/マイクロプラスチックって何だ.pdf
A http://www.env.go.jp/water/marine_litter/01_takada.pdf


2019年6月20日記


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