今年の「国際母なるアースデイ」
毎年4月22日は国連が定めた「国際母なるアースデイ(International Mother Earth Day)」である.1970年,米国ウィスコンシン州選出の上院議員G.ネルソンが,4月22日に地球環境問題についての討論集会を呼びかけたことをきっかけに,同日を‘アースデイ‘とする運動が始まった.この運動はその後,日本も含めて次第に世界各国に広がり,これを背景に,国連は2009年の総会で同日を地球環境について考える「国際母なるアースデイ」 とすることが採択され,翌2010年から実施に移された.

今年の4月22日の米国のニュース番組を見ていると,新型コロナウィルス感染症に関する項目の中に,今日はアースデイであるとし地球環境に関する情報を入れていたものがあった.生産活動の制限や人や物の移動抑制により,大気質(air quality)が大きく改善されているとの報告である.あるニュースでは,中国武漢市の空の様子を映しだし,都市封鎖前はスモッグで見通しが悪く空は灰色であったものが,現在は澄み切った青空となっているのを,画面を二分割して見せていた.また別のニュースでは,人工衛星による一酸化二窒素の濃度の今年に入ってからの時間変化を見せていたものもあった.中国上空でもヨーロッパ上空でも,大都市周辺での濃度激減は一目瞭然であった.また,気候研究者のコメントとして,今年のその時期までの中国の二酸化炭素排出量は昨年に比べ約2億トン,率にして25%も減少していることも紹介していた.もっともキャスターは,継続して二酸化炭素排出量が減るのは温暖化対策として好ましいが,今後中国が生産活動を再開すれば,逆に昨年以上の排出量になってしまうのではとコメントしていた.

ところで日本では,少なくとも私が見ている限りではあるが,4月22日当日も翌23日も,テレビや新聞で国際母なるアースデイに関する報道はなかったのではなかろうか.米国とのこの違いは,報道に携わる人たちの意識の問題だろうか,それとも日本人全体の意識の問題が根底にあるのであろうか.米国と同様に、新型コロナウィルス感染症問題との関係でもよかったのだが,ぜひ取り上げて欲しかった.

5月に入り、新型コロナウィルス感染症の流行が落ち着くにつれ,どの国でも経済活動を復活させようとの動きが本格化し始めている.これまで多くの人が経済的に困難な状況に置かれたので,まずは生産と消費の活動を活発化する施策である.その中では地球環境問題は二の次に置かれた状況である.実際,「新しい日常」ではお弁当などをはじめとし使い捨てのプラスチック容器が多用されそうだ.しかし,今回のこの出来事は,テレワークなどを初めとするエネルギー消費を抑える施策の導入などで,地球環境問題と両立する新しい日常を確立する絶好のチャンスではなかろうか.

2020年5月20日記