Topics 2015.07.07

ストロンボリ火山における地震・地殻変動観測

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地中海に浮かぶエオリア諸島のひとつ,ストロンボリ火山(イタリア)は,紀元前から噴火を続けるヨーロッパを代表する活動的な火山です.現在も数分から数十分間隔で爆発的噴火をする,地中海の灯台とも呼ばれるこの火山で,固体地球物理学講座(地震・火山学分野)は,昨年(2014年)から,フィレンツェ大学,北海道大学,防災科学技術研究所と共同で観測を行い,火山噴火のメカニズムを明らかにする研究に取り組んでいます.

火山噴火は,気泡や結晶を含む混相流体であるマグマが,弾性体である地殻内で運動するという,非常に複雑な物理過程を伴います.また,火山噴火は気象や地震などの他の自然現象と比較しても非常に低頻度な現象であるため,現象の理解において重要な観測データの蓄積が容易ではないという側面があります.

本研究では,ストロンボリ火山において,昨年から今年にかけて地震計と傾斜計を設置し,高頻度な噴火に伴って発生する火山性地震や山体変形を捉える観測を実施しています.ストロンボリ火山における観測の大きな利点は,これらの観測機器を火口から500mくらいの極近傍の距離に設置できるということです.これによって,噴火直前や噴火中の地下浅部におけるマグマの挙動を正確に捉えることが可能となります.

我々の観測中には,山頂火口から頻発する小規模な爆発のほかに,幸運にも数年から10年程度に1回しか発生しない山腹割れ目噴火が発生しました.現在,これまでに回収したこれらの貴重な観測データをもとに,爆発源の位置や規模,爆発直前のマグマ上昇過程,山腹割れ目に伴うマグマの移動現象を定量的に調べています.また,マグマ移動や爆発過程のモデル化にも取り組んでいます.

御嶽山,口永良部島,浅間山,箱根山など,最近では火山噴火に関する話題に触れる機会が多いかと思います.本研究のような海外での噴火事例の研究成果は,日本で生じ得る噴火のメカニズムの解明や予測,火山災害の軽減にも貢献することが期待されます.

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リンク:固体地球物理学講座(地震・火山学分野)ホームページ

(文責 固体地球物理学講座 西村太志教授,小園誠史助教)

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