Topics 2016.04.01

沈み込み帯の火山活動 ~蔵王山における観測研究~

環太平洋火山帯に位置する日本は,全世界の火山の約1割が集中する世界でも有数の火山大国です.これらの火山は,日本列島下に沈み込むプレートの運動によって形成されたものですが,地震・噴火予知研究観測センターでは,このような沈み込み帯における火山の成因を明らかにし,火山現象と地下のマグマ・熱水活動推移を理解するために,東北地方の活火山において,地震・地殻変動・地磁気などの観測や研究を実施しています.

東北日本は,太平洋プレートが日本列島下に沈み込む典型的な沈み込み帯ですが,火山活動の源となるマグマは,沈み込む海洋プレートに取り込まれた水が地球深部まで運ばれた後にマントル中に放出され,部分的に溶融することによって生じます.このマグマは周囲のマントルや地殻に比べて密度が低いため地表まで上昇し,永い年月をかけて火山を形成してきました.このような地球の長期的な活動に伴うマグマの生成・集積・上昇機構の理解は,地震波速度構造や電気伝導度構造の推定手法の発展に伴い,近年著しく進歩を遂げてきました.

一方で,沈み込むプレート運動によって生じる大地震とマグマ活動の関係や,より短い時間スケールでの地殻内におけるマグマの上昇については,未だ理解が十分ではありません.そのため,2011年東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0)以後の東北日本における火山活動の研究を進めることは,物理的理解に基づいた火山活動推移把握及び火山災害軽減のために非常に重要です.東北地方太平洋沖地震は,大規模な地殻変動・応力場変化を広域に引き起こし,全国各地の活火山で地震活動の活発化や噴気の増加等が報告されました.それらの中の一つである蔵王山の直下では,東北地方太平洋沖地震以前から,マグマ中の揮発成分の分離やマグマの冷却固化によって生じると考えられる深部低周波地震が下部地殻 (深さ20~35 km) において時折発生していましたが(図1),2012年以降その発生頻度が急増し,現在も高い活動度を保っています.また,この深部低周波地震増加にやや遅れて2013年1月以降,火山体浅部 (地下3km以浅) における火山性微動や長周期地震が断続的に発生し始めました(図2).

そこで,地震・噴火予知研究観測センターでは,蔵王山直下のマグマ・熱水の分布やその挙動を明らかにするために,1990年代以降行ってきた定常観測に加え,地震・地殻変動・GNSS・全磁力などの臨時観測点を設置して観測強化に取り組んで来ました.その結果,火山性微動・長周期地震が生じている地下約3 km以浅には,火口湖御釜とその東側の噴気地帯を結ぶ破砕帯状の熱水系が存在していることや,その熱水系周辺において地温上昇に伴う熱消磁が発生していることなどが明らかになりました.さらに,地殻変動の詳細な解析により,2015年前半にわずかな山体膨張が生じていたことも明らかになり,地下約5 kmにおけるマグマ蓄積が示唆されました.また,以上のような観測強化に加え,蔵王山の活動を理解するために不可欠な基礎データである火山体構造を明らかにするために,2015年秋には人工地震を用いた構造探査実験を全国の大学の研究者と共同で実施しました(図3).

 このような火山観測の強化・高度化や基礎データの蓄積を通じて,蔵王山で発生が懸念されている水蒸気噴火を引き起こす地下熱水系の理解・状態把握を進め,火山活動予測・火山災害の軽減に貢献出来ると期待しています.

RCPEVE_VOL_1604_Fig_1_rev.png図1.蔵王山周辺の地震活動 (2005年~2016年) 蔵王山直下の深さ20~35 km において,マグマの活動に起因する深部低周波地震の活動がみられる.

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図2.蔵王山周辺の地震活動推移 (2005年~2016年)
(a) は深部低周波地震のマグニチュード(赤丸)と累積発生数(実線),
(b) は浅部長周期地震・微動のエネルギー指数(青△)と累積発生数(実線)を示す.

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図3.蔵王山人工地震探査の発破点・観測点配置
2015年10月,山頂周辺に約150点の臨時地震観測点(赤丸)を設置し,2カ所の地中発破(S1, S2)及び砕石発破(Sx)からの地震波の稠密観測を行った.

リンク:地震・噴火予知研究観測センター

 (文責:沈み込み帯物理学講座 火山研究グループ)

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