Topics 2016.07.12

木星磁気圏での火山爆発に伴うプラズマ変動

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図1. T60望遠鏡で観測した木星を取り巻く高密度プラズマ発光(プラズマトーラス)。中央の木星はフィルタマスクで減光されている。

地球物理学専攻の太陽惑星空間系(C領域)では口径60cmの反射望遠鏡「T60」を、2014年9月に福島県飯舘観測所からハワイ・ハレアカラ観測所へ移設しました(本連載#01)。今回は移設から約2年を経た研究成果の一端をご紹介いたします。

 地球を含む惑星の周辺は電離したガス(プラズマ)で満たされています。太陽から吹き付けるプラズマの流れ(太陽風)は、惑星の持つ固有磁場の影響でせき止められて、周辺には磁気圏が形成されています。なかでも太陽系内最大の惑星である木星は、自身の強大な磁場とともに、磁気圏内に大量のプラズマを生み出す衛星イオを有する点が特徴的です。

イオは活動的な火山を複数もつ、太陽系内で有数の火山天体です。その大気は火山性のガス(二酸化硫黄など)で占められ、太陽紫外線や磁気圏プラズマとの衝突等により磁気圏に放出された中性ガスが電離し、毎秒数トン以上のプラズマを磁気圏に供給しています。電離したガスは、木星の磁場に補足される過程で加速・加熱され、木星の自転と共に周回(共回転)を始めます。このようにして形成されるドーナツ状の高密度プラズマ領域(プラズマトーラス)では、電子との衝突により励起されたイオンが、極端紫外から近赤外の波長において発光しており(図1)、数TWのエネルギーを放出しています。プラズマトーラスを起源とするプラズマは、その場の軌道速度よりも速く共回転しているため、遠心力により外向きに輸送され、木星の両極域に発生するオーロラ(図2)を光らせるような、磁力線方向の電流を生み出していると考えられています。

C領域を中心とする研究グループは、イオから供給されるプラズマがどのように変動し、磁気圏にどのような影響を与えるのかを明らかにする研究を進めてきました。その柱は、(1)火山性ガスの増減の指標となる、中性ナトリウム発光の観測(図3)、(2)イオ周辺プラズマの温度や密度の観測(図1)、そして(3)紫外域や赤外域でみられる極域オーロラ発光の観測(図2)です。(1)と(2)の観測のために、ハワイ・ハレアカラ観測所に整備したT60をはじめとする望遠鏡群が使われました。また、(2)や(3)の観測には2013年に内之浦から打ち上げられた極端紫外宇宙望遠鏡「ひさき」(本連載#02)や、地上望遠鏡(すばる望遠鏡やNASAの望遠鏡IRTF)も使われました。イオの火山活動は何時活発化するのかわかりませんので、ハレアカラからの観測は、木星が夜空に見えている約半年の間休みなく続けます。このような長期・連続観測は、専用の望遠鏡と観測装置を自動運転できるようにすることで、初めて可能となります。

このように周到に観測網を整備して待ち構えていたところ、ひさきの観測が始まってから約1年後の2015年の1月に、プラズマトーラスの特定のイオンの密度が徐々に増加していく現象が捉えられ始めました。詳細な解析の結果、同年1月から5月にかけて、イオの火山の熱輻射の増大や、火山性中性ガスの増大、それに引き続く磁気圏プラズマの温度や密度の増大といった一連の現象が生じていることがわかってきました。火山活動が活発化してから収束するまでの一連の現象を、多角的に捉えた観測は世界で初めてです。今後のより詳細な研究により、木星磁気圏におけるプラズマやエネルギーが動径方向にどのように輸送され、オーロラを生み出すような電流を発生させる機構とどのように関連するのかが明らかにできると期待されます。

折しも2016年7月4日に、NASAの木星探査機「Juno」が木星を回る周回軌道に投入されました。Junoによる木星磁気圏プラズマの直接計測と、ひさきや地上望遠鏡による遠隔観測を組み合わせることにより、これまで明らかにできなかったプラズマの輸送や加熱機構の解明を目指していきます。

(文責 太陽惑星空間系領域 鍵谷将人助教)

関連リンク 

惑星プラズマ・大気研究センター:http://pparc.gp.tohoku.ac.jp/

JAXA ひさきミッション:http://www.isas.jaxa.jp/home/sprint-a/

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図2. T60望遠鏡で撮像した木星画像(九州国際大学・浅田 正 教授提供)と、すばる望遠鏡で撮像した赤外オーロラ画像(東北大・北 元 博士提供)を合成したもの。

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図3. ハレアカラで観測したイオ起源火山ガスの発光(独キーペンハウアー太陽研究所・米田瑞生 博士提供)。中央の木星は遮光マスクで隠されている。

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