Topics 2018.06.13

データ同化で地震・火山現象を理解し予測する

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図1:余効すべりの時間発展(動画は文末に掲載)。(Kano et al., 2015, Geophysical Journal International)

近年、固体地球の分野では大規模な地震・地殻変動観測網の構築により、地面の急激な揺れやゆっくりとした変動を時空間的に高分解能で観測されるようになってきました。一方で、計算機性能の向上により、波動方程式や拡散方程式などの物理モデルを数値的に解くことで、地震の波動伝播や火山の噴煙の拡散といった現象をより高詳細に再現することが可能になってきました。このような大容量観測データと、大規模数値シミュレーション双方の利点を活かした計算技術を開発することが、地震・火山現象の理解の深化に向けた次なるステップといえます。観測データと物理モデルによる数値シミュレーションを、ベイズ統計学を用いて当融合する計算技術を「データ同化」と呼びます。

 

近年、固体地球科学の分野では、データ同化を用いた研究として、地震波動場の推定、地震動・津波の予測、火山体内部における物理パラメータの推定、といった研究が行われています。以下では、例として、データ同化を用いてGPSデータからプレート沈み込み帯の理解と断層すべりの予測を試みた研究例を紹介します。

 

プレート沈み込み帯では、巨大地震の発生直後から数か月・数年にわたり、余効すべりと呼ばれる、ゆっくりとした断層すべりが起きることが知られています。余効すべり自体は我々に被害を及ぼさないですが、余効すべりが空間的に伝播していくことで、プレート境界面での応力が変化し、大地震が誘発されることがあります。そのため、現在まで得られた観測データから、プレート境界の余効すべりの状態を把握すると同時に、数値シミュレーションにより余効すべりを予測することは重要です。

 

断層すべりの時空間発展は、弾性体の運動方程式とプレート境界面の摩擦の式を用いて計算されます。この時、すべりの振る舞いは摩擦パラメータと呼ばれる、プレート境界面の摩擦の特性によって決まります。そこで、地震後にGPSで観測された地殻変動データから推定される余効すべりを再現できるような摩擦パラメータを推定し、得られた摩擦パラメータを用いて余効すべりの推移を数値シミュレーションで予測するデータ同化手法を開発しました。開発手法を2003年に発生した十勝沖地震の余効すべりに適用しました。このとき、地震後15日の観測データのみを用い、続く15日の観測データを検証用データとして予測結果の検証に用いました。

まず、地震後15日の観測データから摩擦パラメータを推定することで、観測された余効すべりの再現に成功しました(図1)。この結果は、これまでに得られた余効すべり発生時の観測データから、プレート境界の過去の状態を再現し、また現在の状態を把握できることを意味しています。また、推定した摩擦パラメータを基に、その後の15日間の余効すべりの推移を数値シミュレーションし、検証用データと比較したところ、未来の余効すべりをほぼ予測できることが分かりました。この手法をさらに発展させることで、プレート境界の断層すべりのリアルタイムモニタリングが可能となり、その後の断層すべりや周囲のプレート境界に及ぼす応力変化をより正確に予測することができると期待されます。

 

ここで紹介したデータ同化は、気象の分野では既に盛んに用いられており、天気予報として私たちの生活に大きく貢献しています。天気予報では、観測データを流体の数値シミュレーションに取り入れ、過去や現在の大気の状態を再現・把握し、この情報を基に未来の大気の状態をより正確に予測する、といったことをしています。私たちは、断層すべりの数値予報といった究極の目標に向けて、断層すべりのモニタリング手法の開発を進めています。

 (文責 固体地球物理学講座 助教 加納将行)

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