法律にみる大学の定義
本学には,教育に関する議論を行う組織として学務審議会があります.この審議会は,「全学教育」に関する意義や取り組みを紹介する広報である誌「曙光」を,1996(平成8)年から発行してきました.皆さん,ご覧になったことはありますか.事務棟の教務の窓口や厚生施設などに置いていますので,ぜひ手に取って読んでください.全学教育に携わっている多くの先生方の,教育に関する様々な熱い想いがつづられています.私もこの10月に発行される曙光No. 34 の巻頭言を依頼され,「全学教育の狙い〜今年本学へ入学した皆さんへ〜」と題する文章を書きました.その中に,「大上段に構えた問いであるが,大学とはいったいどんなところだろうか,との問いに,私は『知を継承し,知を創出するところ』と表現したい」と記しました.今回この欄で,大学が法律ではどう定義されているのかを紹介することにします.

まず,1948(昭和23)年に制定された「教育基本法」です.この法律では,なぜ教育をするのかの目的が謳われています.現行の法律は,2006年に全面改正されたものです.この「第二章 教育の実施に関する基本」の第七条が大学に関する記述です.「大学は,学術の中心として,高い教養と専門的能力を培うとともに,深く真理を探究して新たな知見を創造し,これらの成果を広く社会に提供することにより,社会の発展に寄与するものとする.2 大学については,自主性,自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」.

次に,教育のかなりの部分は「学校」においてなされることになりますが,この学校について規定している「学校教育法」をみてみましょう.この法律は,1947(昭和22)年に制定され,幾度もの改正がなされ,現在に至っています.大学の定義は,第九章第八十三条にあります.「大学は,学術の中心として,広く知識を授けるとともに,深く専門の学芸を教授研究し,知的,道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする.2 大学は,その目的を実現するための教育研究を行い,その成果を広く社会に提供することにより,社会の発展に寄与するものとする」.

どちらの法律にも使われている用語を使えば,大学は,「学術の中心」であり,「教育」と「研究」を通して,「成果を広く社会に提供することにより,社会の発展に寄与する」ところ,と表現できそうです.私は,大学にのみ,わざわざ「研究」が入っているところが重要だと思います.では,教育と研究の関係はどうあるべきなのでしょうか.それは,本学の理念の一つである「研究第一」主義に尽きるのではないでしょうか.


2012年9月20日記


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