コピペはカンニング |
私たちは研究の過程であるひとまとまりの成果が得られたときは,論文にまとめ公表します.公表する場は,学会や出版社が定期的に出している学術誌(academic journal)です.研究者は,成果を世界中の研究者に読んでもらいたいので,理系の分野で特に顕著ですが,論文を英文で書くことが常識となっています.英語が研究者コミュニティの公用語なのです.そのような事情から,日本で出版している雑誌でも,英文論文を掲載している雑誌を国際誌(international Journal)と呼ぶこともあります. ところで,研究とは,それまでの知見(知識,すなわち,わかっていること)に新たな知見を付け加えることです.したがって,論文の序論(あるいは‘はじめに’)で,扱う対象の最新知見とはどのようなものであるのかを,過去の論文を取り上げて論ずることになります.論文の中に,他の論文を取り上げることを「引用(citation)」といいます.誰々さんが既にこういうことを見つけていた,あるいは考察していた,とレビューすることです.きちんとなされていない論文は,論文の審査(査読)過程で,きちんとレビューするようにと,厳しい指摘をうけることになります.きちんとすることで,翻ってその論文で何が新しくわかったのかを明瞭にアピールできるようになります. さて,皆さんが書くレポートでも同じことが言えます.新しい知識や考察を,自分の言葉で表現することが求められているのです.私たちは現在,インターネットを利用することで様々な事項を手軽に調べることができるようになりました.キイワードを入れれば,たちどころに多くの情報を得ることができるのです.しかし,これらの情報を,ただ寄せ集めるだけではレポートにはなりません.それだけでは,既存の情報なのです.皆さんのレポートに求められているのは,その既存のものに追加する新しい考察なのです.新しい考察ですから,皆さん自身の言葉で書くことになります.したがって,書かれた文章は過去に誰も書かなかった文章ということになります. 繰り返しですが,インターネットで見つけた文章を適当につなぎあわせてレポートを作成しても,意味はありません.ましてや,それをあたかも自分の考えであるかのごとく表現することは,‘フェア(公正)’ではありません.それは,研究不正の一つである「剽窃(ひょうせつ)」あるいは「盗用」という行為なのです.「コピー・アンド・ペースト(copy and paste)」,略して‘コピペ’行為なのです.筆記試験での不正行為にカンニングがありますが,コピペもこの行為と同じなのです.皆さん,レポートでは,自分で考えて,そして自分の言葉で,自分なりに表現することが大切なのです. 2015年1月20日記 website top page |