旅立つ皆さんに贈る言葉
研究室を離れる人に対して,記念にと,色紙に研究室の全員が寄せ書きをして贈っている.寄せ書きといっても,私は,1994年に研究室の担任になって以来,毎年四字熟語を書いている.そして2001年度からは,贈った四字熟語と解説のような短い文章をウェッブサイトにも掲載している.それが「旅立つ皆さんに贈る言葉」という項目である.

今年(2007年)度は,昨年12月に離れた人も含め,8人の人たちが研究室を旅立つ.そこで8人に対し,それぞれ異なる四字熟語を書かせていただいた.さて,旅立つ8人の中の一人,A君である.私が書いた言葉に対して,他の人とは言葉の質(?)が違っているようで,気に入らない,と文句(感想,あるいは「ぼやき」のようなものですので,ご安心を)を言いにきた.

前にもエッセイに書いたのだが,私が贈る四字熟語は,その人に対する感想であったり,将来に向けての期待であったり,戒めとしてほしいようなものであったり,といろいろである.A君への四字熟語は,確かに「教訓」のようなものであったので,ほかの人との比較で気になったのであろう.既存の四字熟語から選ぶので,贈られる本人との相性もあり,出来・不出来があることは私も承知している.でも,たいていの人は納得してくださっているとも思っているのですがね・・・.

ところで,住友生命は,毎年,創作四字熟語を募集している.そして,年末には入選した言葉が公表される.創作といっても完全な創作ではなく,もととなる四字熟語があり,それを借用し,読み方を似せるように漢字を入れ替えたりして,世相を表現したものにするのである.18回目となる昨年の入選作に,「突然変異」ならぬ「突然返位」というものがあった(滋賀県の田辺貞夫さんと長野県の横川正秀さんの作品).前の首相が所信表明した直後に,その首相の座(地位)を突然降りてしまったことを,見事に表現している.誰もが思わずにやりとする,傑作であろう.

さて,A君から文句を言われ,住友生命が募集している創作四字熟語に刺激を受けたからではないが,既存の四字熟語ではしっくりこないときなど,自作の四字熟語を贈ったらどうだろう.

例えば,「自律自動(じりつじどう)」などは,私も含め誰にでも贈りたい言葉の一つである.「自ら律し,自ら行動する」という意味に使いたいが,この言葉,少なくとも私が持っている数冊の四字熟語辞典には載っていない.もっとも,インターネットで調べたら,ロボット工学の世界では既に頻繁に使われているらしいのだが.

うまく作れるかどうかはわからないが,自作四字熟語を,旅立つ人に贈ることをいつ解禁するとしようか.


2008年3月15日記


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