徒然なるままに(2010年6月)
1.再びカサブランカ

映画「カサブランカ」(1942年,米国)は,私にとって洋画部門第1位の映画である.先のエッセイ(22)「Here’s looking at you, kid!」にも書いたように,もう何度観たのか数え切れないほど観ている.

丸谷才一さんは,エッセイ集「綾とりで天の川」(文春文庫,2008年9月,348ページ)の中で「君の瞳に乾杯」(172-197ページ)と題してこのカサブランカを取り上げた.このエッセイ,カサブランカ・ファンには必読のものである.

このエッセイで知ったのだが,映画カサブランカの後日譚の小説があるのだという.その小説によると,ラズロとイルザが飛行機でカサブランカを出発したのは,1941年12月7日の午後10時ごろ,と設定されているのだそうだ.飛行機が飛び立った後,リックとルイ(フランス人の警察署長),そしてサム(ピアニスト)の3人が,カサブランカから逃れるため車で移動中に,ラジオから,真珠湾の米国艦隊に日本軍が奇襲をかけた(日本時間では12月8日)とのニュースが流れる場面がでてくるという.

丸谷さんのエッセイ集はどれも大変面白いので,いつも文庫で出版されるやすぐに読んでいる.丸谷さんのエッセイ集は雑学も含め知識の宝庫,多くのことを学べる喜びがある.一方で,自分の教養のなさを,身にしみて感じてしまうことにもなるのだが.

ところで,この丸谷さんのエッセイの中に,次のような記述がある.「二人の乗ったビュイックを運転するのはピアニストのサムだ.役者名で言へばドォーリー・ウィルソン.彼はこれで有名になったといふことを,和田誠さんと三谷幸喜さんの『カサブランカ』対談で知りました.これは『キネマ旬報』に二回つづきの対談で情報満載ですよ」(178ページ).

さらにもう一箇所,映画カサブランカの謎(疑問点)をまとめたところに,次のような記述もある.「(5)しかし何と言っても不思議なのはリックは一体どうするつもりなのか.自分が女と逃げるのではなく,イルザとラズロの二人を落ちのびさせると決意したのはいつのことなのか,といふ問題ですね.このへんの所,和田=三谷対談もいささか手を焼いている感じです」(181ページ).

さて,このキネマ旬報に二回にわたり掲載されたカサブランカを題材にした和田誠さんと三谷幸喜さんの対談であるが,最近,ひょんなことからその内容を知ることとなった.

5月のある日曜日,本屋さんで本を物色していたら,新刊書のコーナーで和田誠さんと三谷幸喜さんの「これもまた別の話」(新潮文庫,2010年5月,655ページ)という対談集を見つけたのである.この中に丸谷さんが取り上げた「カサブランカ」(513-539ページ)があった.

二人の対談は1996年から数年間行われ,月2回出版されるキネマ旬報に,一つの映画の対談が2回に分けられて掲載されたのだという.つまり,一月に1本の映画が紹介されることになる.そして最初の12本の対談が「それはまた別の話」として,後半の12本の対談は「これもまた別の話」として,それぞれ単行本で出版された.今回は,その二つ目の単行本の文庫化であった.

さて,二人の対談であるが,映画に関する和田さんの博識には唸るばかりである.例えばカサブランカに出演している俳優が他のどの映画に出ているかなど,あっという間に解説してくれる.もっとも,その当時の映画,私はまったく観ていないので解説されてもちんぷんかんぷんなのだが.ともあれ,この対談集も,カサブランカ・ファン必読の書である.

このようなこともあり,溜まりに溜まった仕事で山形に帰らなかった5月のある日曜日の夜,グラスを片手に,カサブランカを再び楽しんだのであった.

2.多様な「緑」

これまで,仙台を訪問した人には,仙台は5月や6月が一番いい季節ですよ,と話している.もちろん,私自身がそのように感じているからであるが,その理由は,多様な「緑」が楽しめるからである.

仙台では花見が終わると,桜も含め,木々は一斉に新芽を出し,葉が繁りだす.このとき,木の種類によって葉の色が微妙に異なるのである.そして,どれもが,葉が出だした当初は薄い色で,少しくすんだ感じであるが,だんだん葉が生い茂るにつれて,緑の濃さを増す.この薄い緑色から濃い緑色に変わる季節,そう,5月から梅雨に入る前の6月中旬までのころが,仙台の一番いい季節である.

私の連れ合いもこの緑の季節が大好きであるという.もっとも,彼女に言わせると,山形は四方を山に囲まれており,仙台よりももっときれいよ,とのことである.はいはい,私も否定はしません.私はあくまで,「仙台ではこの季節が一番いいですよ」と,他所とは比較していませんので.

さて,多様な「緑」であるが,日本語でも思いつくだけでも,緑に加え,薄緑,青緑,黄緑を始めとし,多くの表現がある.実際どの程度あるだろうと思い,インターネットのフリー百科事典「Wikipedia」で調べてみた.「色名一覧」で検索すると,色まで表現してくれていた.どの色を緑系統の色とするかについては,人によって感じ方が違うかもしれない.実際,青系統の色との境目が判断に困る.ともあれ,私なりに判断すると,次のような緑系統の色があった.

青竹色,青緑,浅緑,暗緑色,黄緑,鶯(うぐいす)色,薄緑,黄緑(おうりょく)色,海緑色(かいりょく),黄緑,草色,苔(こけ)色,深緑(しんりょく)色,青緑(せいりょく)色,千歳(せんざい,ちとせ)緑,淡緑(たんりょく)色,千草色,常盤(ときわ)色,砥草(とぐさ)色,苗(なえ)色,灰緑(はいりょく),白緑(びゃくりょく),抹茶色,松葉色,翠(みどり),萌黄色,柳色,緑青(ろくしょう)色,若草色,若葉色,若緑,山葵(わさび)色.

なんと32種類である.なお,JIS(日本工業規格)でも上記の色も含め,全296種類の色を指定しているのだそうだ.これら296色も,「JIS慣用色名」で検索すれば実際の色を見ることができる.

ところで,上記2項目には,外国で表現されている多様な「グリーン」も,32種類挙げられていた.ついでだから,これらも記しておこう.

アーモンドグリーン,アイスグリーン,アイビーグリーン,アクアグリーン,アップルグリーン,エバーグリーン,エメラルドグリーン,オパールグリーン,オリーブグリーン,グラスグリーン,クロムグリーン,コバルトグリーン,シーグリーン,シャトルーズグリーン,スプレイグリーン,ダックグリーン,チャートリュース,ナイルグリーン,ハンターグリーン,ピーグリーン,ピーコックグリーン,ビリジアン,ビリヤードグリーン,ファーグリーン,フォレストグリーン,ブルーグリーン,ボトルグリーン,マラカイトグリーン,ミントグリーン,モスグリーン,ライムグリーン,リーフグリーン.

日本でも,外国でも,色合いの微妙な違いを意識して,いろいろと「緑」を表現しているようだ.それにしてもこんなにも多くの表現があるのは素晴らしいことである.私たちは,このように多様な「緑」が将来も無くならないよう努力しなければならない,と思うのだが.

3.我が家の冷蔵庫の電力消費量

この欄のエッセイ「賞味期限が切れた我が家の冷蔵庫」(55-2)に書いたように,マンションで使っている家電メーカーT社の冷蔵庫(230リットル)は,既に25年も使用しているものである.部品の劣化による発火などが心配になったので買い替えようと,この半年,大手家電販売店のチラシなどで最新のものをチェックしている.だいたい候補が決まりつつあるのだが,ふと,現在使用している冷蔵庫の電力消費量を知りたくなった.

そこで,ワットチェッカーと名付けられた簡易測定器を用いて,冷蔵庫の電力消費量を計測してみた.測定は,器械を壁のコンセントに差し込み,それに冷蔵庫をつなぐだけでよい.計測期間が問題であるが,毎日だいたい決まった時間に数値を読むことにし,20日間程度続けることとした.もちろん,電力消費量は,中に保存しているものの量や,また室温がどの程度かによって,つまり季節によっても変わるはずであるが,とりあえず,20日間も測れば意味があるだろうと考えた.

5月中旬から20日間ほど計測した結果,1日当たり約1.1kWhの電力消費量であることが分かった.毎日観察していると,出張で家を空け1回も扉を開けなかった日があったり,逆に1週間分の食料を詰め込んだりした日があるのだが,電力消費量も対応して敏感に応答することが分かった.ともあれ,1年を通してこの程度だと仮定すると,年間約400kWhの電力消費量となる.この値,私の年間総電力使用量のちょうど3分の一にあたる量である.

さて,料金に換算してみる.1kWhの単価がいくらなのかは,電力消費の一月あたりの総量で変わる.私の一月あたりの総電力消費料は100kWh程度なので,東北電力の料金表(2010年5月現在)から,120kWh までの単価,16.891円/kWhで計算することとした.そうすると年間6756円となる.

さて,購入しようと考えている冷蔵庫であるが,今度は家電メーカーH社の415リットルのものである.一人暮らしなので,容量が大きすぎるとも思うのだが,これより小さなものでも逆に電力消費量が多いことが分かったからである.ちなみにこの冷蔵庫,標準の年間電力消費量は280kWhであり,2010年度基準の省エネ達成率として182パーセントを謳っている.大手家電販売店の広告では,1年間の電力料金は6160円とある.広告では,1kWhあたり22円で計算しているようだ.

さて,もし,この数値が実際の使用でも達成されれば,現在よりも電力で年間120kWh,30%の削減,電力料金で2027円(1kWh あたり16.891円として計算)の節約となる.15年間の使用を仮定すると30405円もの節約である.

新しい冷蔵庫は,電力消費量と電気代を節約できるし,加えて厄介な霜取り作業も不要となる.さて,年間120kWhの節約,新しい冷蔵庫で本当に実現するのだろうか.購入後も調べてみようと思っている.結果が出たら,この欄で紹介しよう,乞うご期待.そう,私は楽しみながら(?),省エネにトライしている.


2010年6月15日記


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