徒然なるままに(2010年9月) |
この(2010年)8月下旬,ドイツ,ハンブルグに出張した.ハンブルグへは1995年以来の15年ぶり,2回目である.この出張中に見聞きした中から,他愛のないことをいくつか書いてみたい. 1.降水量の表し方 ホテルでふと見たテレビのニュースで,どこかの地方で洪水が起こったのであろうか,大雨による被害を報道していた. このニュースの中で,いくつかの地点の「降水量」が字幕で出た.ある地点で186l/m2,また別の地点では135l/m2とある.アナウンサーの説明はドイツ語であるので理解できなかったが,この値は1日(24時間)当たりの降水量に違いない.1時間降水量でも,ありえなくはないのだが.ここでの注目点は,降水量の表し方である.ドイツでは,1平方メートルに降った降水量を,リットルという「体積」の単位で表現していたのである. 日本では降水量は「厚さ」(あるいは「深さ」)という長さの単位で表している.「仙台の明日の24時間降水量は10mmでしょう」とか,「仙台では,今日の10時からの1時間の降水量は20mmという,土砂降りの雨になりました」という具合である.雨水が流れずにそのままじっとそこにあれば,1時間に20mmの厚さ分だけ溜まる,と私たちは理解する. ところで,186l/m2とは日本での表現「mm」で表すとどの程度になるのだろうかと計算してみた.何のことはない,そのままmmに直してよいのであった.確かに,24時間降水量が186mmの雨は尋常ではなく,土砂崩れなどの被害が出てもおかしくない大雨であった. ニュースの最後が天気予報になったので,気温の単位どうだろう,と見ていたら,摂氏(C)で表現されていた.会議の3日目の天気は雨,最高気温が17℃,最低気温が12℃であった.猛暑の日本から出張した私たちにとっては,寒いくらいの気温であった. 外国出張すると,このような単位の違いに戸惑うことが多い.特に米国は,単位に関しては唯我独尊,独立独歩である.例えば,気温は華氏(F)で表現される.今日の最高気温は華氏100度などと.こうなるといけません,換算しなくては感覚がつかめない.華氏から摂氏に直すには,華氏から32を引いて9分の5を掛ければよい.華氏100度とは,およそ摂氏38度のことである. さて,降水量であるが,「量」がつくからには本来は体積で表すのが筋であろう.その意味では,「l/m2」という単位の方が「mm」で表すよりも,降水量という名称には整合性が取れている.合理的なドイツ人の考え方らしい. 2.ドイツでも星座占い これもテレビ番組で知ったことである,なんということか,ドイツのテレビでも星座占いをやっていたのである.縦にいくつかの星座を並べ,その右側には明るく輝く太陽のような印が,ある星座は1つ,ある星座は4つ,というように. ヘェー,これは日本と同じではないかとあきれてしまった.日本の朝のテレビ番組では,大抵この星座占いを放送している.日本人は星座占いが大好きなようである. さて,この星座占いで思いだすのは,もうかれこれ10年以上も前のことである.当時の研究室秘書さんのSさんがあるとき,「あの番組での占い,このところずっと私の星座,悪いの」と私に話したことがある.私は,「そんなことはないでしょう,テレビの占いなのだから,きっと12回も連続して見ていれば,1位のときもあるし,12位のときもありますよ,平均すれば,どの星座にも代わるがわるすべての順位がついていますよ,きっと」と答えておいた. そんなふうに言ったからには,これを証明しなければならない.そこで,次の日から毎朝,12の星座の順位を記録することにした.12星座が二回りする24回分の記録を連続して取れば十分だろうと考え,記録をし続けた.その結果,期待通り,ほとんどすべての星座の順位の平均が,6位から7位の間に分布した.ご存知のように,順位が完全にランダム付けられるとし,1位を1点,12位を12点とすれば,平均は6.5点になるである.記録し,計算した紙を示してSさんに話したところ,確かにそうですね,と最終的には納得してくれた. それにしても,ステレオタイプな見方かもしれないが,お堅いお国柄のドイツでも,星座占いが堂々とテレビに登場していることには,イヤー,驚きました. 3.緊急車両のサイレンの鳴らし方 私が宿泊したホテルは大通りに面していて,2階の私の部屋も大通り側であった.窓を開けると,車が通る音も,人の話し声もかなりの大きさで聞こえる.この大通り,ハンブルグのメインストリートの一つで,交通量は相当なものであった. この大通り,当然であるが,時々緊急車両も通る.面白いのはこの緊急車両のサイレンのことである.パトカーや消防車などの緊急車両のピーポーというサイレン,いやヘェーポウに近いのだが,時々やんでは,また鳴り始めるのである. あるとき,歩道を歩いているときに緊急車両が通った.そこで見て,そして聞いていると,交差点や近くに車がいるときにサイレンを鳴らし,近くに車や歩行者がおらず,通行の安全が確認されるようなときには,サイレンを止めていたのである. 仙台の私のマンションは,広瀬通りと西公園通りが交差するあたりに近い.西公園通は,北上すれば大学病院にぶつかる.そういう場所なので,しょっちゅう緊急車両が通る.日本では,もちろん昼も夜も,近くに車があろうがなかろうが,サイレンは鳴りっぱなしである.さらには,交差点で「右に曲がります」などのアナウンスも入る.日本では,「ほぼ安全だろう」と判断できる状況でも,走っている緊急車両はサイレンを鳴らすことが義務付けられているのだろう.「ほぼ安全だろう」のようなことは,日本では許されないのである. これもそれも,お国柄である.さて,どちらが合理的なのであろうか.私自身はこのハンブルグで見聞きしたドイツのやり方が,合理的と思えるのであるが. 2010年9月15日記 website top page |