今年の私のフェルメール |
ある用件で数学専攻のK先生からメールをもらった.そのメールの最後に,先のこの欄のエッセイ,「フェルメールからのラブレター展」(No. 77 ,2011年11月15日)を読んで,福岡伸一さんの本,「フェルメール光の王国」(木楽舎,2011年8月,256ページ)に興味を持ったことが書かれてあった.そこで後日この本をお貸ししたところ,15年ほど前,K先生がある雑誌に書いたエッセイのコピーと手紙が添えられて返却されてきた. K先生は世界中を飛び回って研究されている.お手紙を読むと,出張先で僅かの時間を見つけては美術館や博物館を巡ってきたのだという.これは私とまったく同じなのだが,私とは比べられないほどたくさんの国に行っているので,はるかに多くの美術館を楽しんでいるようだ.実際,K先生はすでに,世界各地で26〜27点ものフェルメール作品を見ているのだそうだ.私のほぼ倍の作品である. K先生のお手紙には,こんな記述があった.「私にとってのフェルメールの魅力は,幸せの瞬間をとらえ,その高揚感が動きに転じるその直前を永遠に固定したところにあります.一方で『時が止まった静謐』と表現され,また一方で『微妙な動きの間隔が畳み込まれている』,『動きの間隔が一枚の絵に凝縮されている』(いずれも藤原えりみの表現)と評されてきたフェルメールの作風を『微分』と表現された福岡氏には脱帽です.フェルメールをレーウェンフック屋スピノザとの関連は良く指摘されてきましたが,福岡氏の科学者としてのアプローチは,理系人間として心地よいですね」.私もその通りだと思います. さて,今年,2012年の私のフェルメールの楽しみは,まずは,フェルメール・センター銀座で開催されている「フェルメール光の王国展」に行くこと.今年(2012年)の1月20日から7月22日まで開催されているようだ.標題から察しがつくように,福岡伸一さんの監修である.全作品37点が最新のデジタル技術で複製(re-create)された全作品37点が展示されているという.また,アトリエが再現されていたり,フェルメールの関する多くの資料も展示されているという.これは楽しみ. 二つ目の楽しみは,東京都美術館のリニューアルオープンの企画,「マウリッツハイス美術館展『オランダ.フランドル絵画の至宝』」である.6月30日(土)から9月17日(月)まで開催される.マウリッツ美術館はオランダのハーグ市にある美術館で,フェルメールの作品を3点所有している.この美術展には,「真珠の耳飾りの少女」と「ニンフとディアナとニンフたち」が来る.この展覧会では,ルーベンス,レンブラント,ブリューゲルなどのオランダ・フランドル画家の作品も多数紹介されるという. ところで「マウリッツ」は,ヨ−ハン・マウリッツ(1604-1679)のことで,オランダ領ブラジル総督を務め,後にオランダ王室となるオラニエ家に繋がる名家のようだ.その邸宅が1822年から美術館となったという.そのため,「王立絵画館」とも呼ばれているらしい.機会があればぜひ行きたいものだ.20012年から大規模改修工事が入り,リニューアル・オープンは2014年になるとのこと.当分,お預けですね. さて,「真珠と耳飾りの少女」,私はこの作品がフェルメール作品の中でも最高傑作だと思っている.これは本当に楽しみ.そうそう,2003年には同名の映画が作られた.実際は少女のモデルは分かっていないのだが,映画の中では,使用人であったとの設定である.私は見ていないのだが,連れ合いは見たという.DVDを購入しようかと,迷っているところである. そして三つ目の楽しみである.もう1点,フェルメールの作品「真珠の首飾りの少女」が来日する.これも最高傑作と評する人多い作品である.東京都美術館とほぼときを同じくして6月13日(水)から9月17日(月)まで,国立西洋美術館で開催される「ベルリン国立美術館展〜学べるヨーロッパ美術の400年〜」で展示される1作品である. さてさて,私にとって,今年は今まで以上に忙しい年になりそうな予感であるが,ここに紹介した三つの展覧会へ行くことを楽しみにして,乗り切りたいものだ. 2012年3 月15日記 website top page |