七大戦
七つの旧帝国大学のスポーツサークルの間で競う七大戦(ななだいせん)の正式名称は,「全国七大学総合体育大会」である.本学学友会体育部にとって,七大戦はもっとも大きなイベントである.

私は,昨年4月,学生支援を担当する理事になったことから,職指定で学友会副会長にも就くことになった.私は生来「体育会系」の人間ではない(だろう).中学でも高校でも,一旦は運動クラブに入るのだが,すぐ退部した.中学校での退部の原因は,病気になり1か月間,学校を休んだことであった.大学でもスポーツサークルとは全く縁がなかった.そのようなこともあり,本学体育部に関することは全く無知であった.そこで遅ればせながら,昨年来様々なことを学んできた.その一つがこの七大戦である.

昨年(2012年)の七大戦は第51回目に当たり,九州大学がお世話した.この世話する大学のことを主管校と呼んでいる.開会式は,昨年7月7日(土)に,九州大学伊都キャンパスで行われた.私も,総長とともに出席した.

各大学の七大戦にかける意気込みは凄く,例えばそれは,懇親会での総長の挨拶にも現れる.どの総長も,およそサイエンティストらしくなく,今年はうちが優勝するのだ,という根拠のない主張を振りかざす.

さて,「文教速報」,2012年8月24日号に,この開会式の様子が写真入りで報じられた.写真は,九州大学有川総長が壇上で挨拶している場面で,壇上に座っている私も有川総長のすぐ隣に写っていた.

この記事よると,七大戦は,「昭和36年の北大体育会委員長の阿竹宗彦(あたけ むねひこ)氏が『学生自身の運営する総合体育大会』が必要と考え,競技ごとに個別に行われていた七帝戦を総合化した『国立七大学総合体育大会』の開催を提唱.全国を駆け巡り各大学の賛同を得たことが誕生の発端」となったという.

私はこの文章に挙げられた阿竹さんに興味を持った.どんな方で,何を考えて七大戦を提案したのだろうかと.いろいろ調べているうちに,阿竹さん,とても魅力的な方であることが分かった.そこで,7月3日(水)の夕方に,川内萩ホールで開催された本学応援団主催の七大戦壮行会懇親会で,この阿竹さんの話題を入れて,私は大要次のような挨拶を行った.

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学友会副会長との立場で,一言ご挨拶したい.

7月に入り,いよいよ七大戦も佳境を迎えようとしている.既にアナウンスがあったように,これまで6種目が終わり,本学は首位と2点という僅差の北海道大学,名古屋大学に次ぐ第3位とのことだ.この勢いを維持し,最後まで突っ走り,10回目となる優勝を是非とも勝ち取ってほしい.

さて,昨年,2012年の第51回七大戦は,九州大学が主管校であった.その開会式は7月7日(土)に伊都キャンパスで行われた.私は初めて出席したが,開会式後の懇親会で,どの大学の総長も,今回は我が大学が優勝すると根拠のない理由で主張しているのは,聞いていて,とても楽しいものであった

その開会式が行われたことが,「文教速報」という,主に国立大学・高専に関する出来事を報道する冊子に掲載された.その記事の中に,この七大戦は昭和36年に北大体育会委員長の阿竹宗彦氏が提唱したと書かれていた.

そこで,阿竹さんとはどういう方で,どのような経緯で提唱したのかなどに興味をもったので調べてみた.その結果,いろいろ面白いことが分かった.

この阿竹さん(おそらくまだご存命で,今年73歳なるのではないか)は,京都大学入学後,北海道大学に転学している.北大応援団第49代団長で,恵迪寮の寮長でもあった.ある方の書いた文書には,「大柄な体格で肩を怒らし,頭髪茫々,顔面髭だらけ,大声で怒鳴る様は,伝え聞く旧制高校の応援団長の風格に満ち溢れていました」とあった.

この阿竹さんが昭和36年ごろ,学生自身が運営し,真のアマチュア精神で戦う体育大会を七大学でやりたい,と考えていたようだ.これを実現すべく,阿竹さんは六大学を巡り,体育会委員長を説得する.東北大学や九州大学は早い時期から賛成したようだが,京都大学と,特に東京大学は大反対であったという.それでも,その年の9月に東京大学で,翌年1月には京都大学で,さらに4月には場所は不明だが,体育会委員長の会合をもち,ついに開催が最終決定したようだ.

もちろん,大学側の協力も取り付けなければならない.これも北海道大学の学生部が他大学を根回ししてくれたようだ.北海道大学学生部の課長補佐の苫米地さんという方が,六大学を説得しに回ったとの話がある.ともあれ,めでたく第1回大会が北海道大学の主管で行われた.

この時,北大学長の杉野目晴貞先生は,開会式には是非各大学の学長にも出席してほしい,ということで,当時東大総長の茅誠司先生に相談されて,以後,開会式の前には,七大学の総長が一堂に会し意見交換をするのが慣例となっているとのことだ.

さて,話を戻すと,北大応援団長で体育会委員長の阿竹さんの頑張りで七大戦が生まれ,それが,今回で52回目を迎えるわけだ.たった一人の情熱が,周囲の仲間たちを動かし,ついには大学まで動かして七大戦が実現したことは,素晴らしいことである.

学生からの発想で,学生たちが自ら運営する大会である.フェアプレーの精神で全力を挙げて競い合い,そして試合が終わったらノーサイドで他校の人たちと親睦を深めてほしい.

2年後の平成27年度第54回大会は,本学が主管校となる.2年という時間はあっという間に過ぎる.今大会に全力を尽くすことはもちろんであるが,2年後に主管校になることを念頭に置いて,今回の大会に参加してほしい.

最後に,繰り返しになるが,今大会,是非このままの好調を維持して,10回目となる優勝を勝ち取ってほしい.


2013年7月10日記


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