全学教育ガイドと教養教育院特別セミナー
今年も「東北大学全学教育ガイド」を作成する時期になった.このガイドは,新入生に「全学教育」の重要性を訴えるとともに,それを支える仕組みや組織と,その活動内容を紹介するものである.また,教員全員にも配布することで,全学教育をどのようにやっているのかを知ってもらうことも狙っている.私がこの立場に就いた2012年に,このガイドを作成することを提案し,2013年度新入生から配布している.

私は学務審議会委員長として,全学教育ガイドの最初のコラムを書いているのだが,今年度は「豊かな実りを得るためには,確かな土壌の準備を!」と題する次のような文章を書いた.

「皆さん,東北大学への入学,おめでとうございます.皆さんはまず,川内北キャンパスで全学教育を受けることになります.全学教育とは,学部を問わない全学のすべての皆さんを対象とした教育のことです.共通教育あるいは基盤教育と呼んでいる大学もあります.

全学教育のコアは,教養教育(リベラルアーツ教育)です.自分や他者のこと,社会のこと,そして自然のことを理解するための基礎知識と,探求の仕方を学ぶための授業科目群が準備されています.皆さんが大学で極めたい専門分野の知識とそれを応用する力を養うという豊かな実りを得るためには,この全学教育で教養を高め滋養豊かな土壌を準備することが肝要です.このガイドを参考に,積極かつ自発的に全学教育を楽しんでください.

本学教養教育院と学務審議会が主催する教養教育特別セミナーを4月13日(月)の午後に,川内萩ホールで開催します.セミナーのテーマは『地殻変動期の教養・教養教育-新入生とともに考える-』です.皆さん一人ひとりが,全学教育で何を目指すかを考える良い機会ですので,奮ってご参加ください.」

さて,上記のガイドで案内した教養教育特別セミナーであるが,教養教育院所属の‘総長特命教授’の先生方がお世話をしているもので,毎年この入学後早々に行われている.2011年度から開催されており,今年で5回目となる.

ここで,総長特命教授とは,在職中に教育・研究において優れた業績を挙げ,教育に対して強い情熱を持っている方を名誉教授の中から選抜された先生方のことである.今年度教養教育院に所属する総長特命教授の先生方は5名おられる.これらの先生方は,このセミナーに限らず,基礎ゼミ・展開ゼミをはじめとし多くの講義を開講してくださっている.

さて,教養教育特別セミナーの構成は毎回同じで,まず,総長特命教授の先生方や学外からお招きしたゲストの計3人の講師による,お一人20分間の話題提供がある.続いて,講師と他の総長特命教授を加えた5~6名の先生方がパネリストとなるパネル・ディスカッションが行われる.ここで大事にしているのは,必ずフロアーにいる学生から問題提起をしてもらっていることである.

参考までに,第1回から第5回までのテーマと話題提供者と,その講演題名を以下に記しておく。

  • 第1回(2011年5月9日(月) 13:00~15:00)
    「教養とは?—東北大学生として考えてほしいこと—」
    話題提供1 森田康夫「教養教育の歴史」
    話題提供2 海老澤丕道「物理学と教養」
    話題提供3 工藤昭彦「教養の三層構造」

    第2回(2012年4月9日(月) 13:30~15:30)
    「教養とは?—東北大学生に考えてほしいこと-」
    話題提供1 木島明博「東北大学の教養教育」
    話題提供2 浅川照夫「教養としての英語」
    話題提供3 海老澤丕道「現代社会と教養」

    第3回(2013年4月8日(月) 13:30~15:30)
    「東北大学のチャレンジ~グローバル時代の教養教育」
    話題提供1 花輪公雄「東北大学の全学教育とは何か」
    話題提供2 原信義「復興へ、英知を結集して!」
    話題提供3 森田康夫「歴史から見た教養教育-グローバル時代の今」

    第4回(2014年年4月7日(月) 13:30~15:30)
    「東北大学のチャレンジ~グローバル時代の教養教育改革」
    話題提供1 花輪公雄「教養教育改革が目指すもの」
    話題提供2 西川善久「教養教育にのぞむもの―ジャーナリズムの現場から―」
    話題提供3 野家啓一「教養を哲学する」

    第5回(2015年年4月13日(月) 13:30~15:30)
    「地殻変動期の教養・教養教育-新入生とともに考える-」
    話題提供1 安藤晃「生きる力をはぐくむ教養教育(仮)」
    話題提供2 辻篤子「想像力を鍛える教養教育(仮)」
    話題提供3 工藤昭彦「私が取り組んだ教養教育(仮)」
    (この原稿を書いている2月上旬現在,講演題名はまだ仮のものである.)

毎回,いろんな観点から教養教育の意義を考えるテーマが選ばれている。話題提供の内容は,後日「教養教育院セミナー報告」なる冊子としてまとめられている.興味を持たれた方は教養教育院のウェッブサイトを訪問してほしい( http://www.las.tohoku.ac.jp/home).


2015年2月10日記


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