仙台市天文台のアースデイ講演会
国際連合(国連)は,2009年の総会で4月22日を「国際母なるアースデイ(International Mother Earth Day)」と決めた.一般には単にアースデイと呼ばれている.以下,Wikipediaなども参照して,アースデイの由来を少し.

1970年,米国ウィスコンシン州選出の民主党上院議員G.A. ネルソン(1963-81)が,4月22日に環境問題の討論集会を呼びかけたことに端を発して,4月22日をアースデイとする運動が始まり,次第に世界各地に広がっていった.このような動きを背景に,国連では2009年の総会で,4月22日を地球の環境について考える日として「国際母なるアースデイ」とすることが採択され,2010年から実施された.

日本でも,4月22日を中心に地球環境を考える行事が行われてきた.この4月22日のアースデイは,地球環境の保護と保全を目指す運動の一環として位置づけられている.

一方このほかにも,国連の一機関であるユネスコ(UNESCO:United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization:国連教育科学文化機関)が決めたアースデイも存在している.米国の平和運動家J. マコーネル(1916-2012)は,1969年10月,サンフランシスコで開催されたユネスコの大会で,地球上の生命を祝い,平和を希求するために全世界でアースデイを設けることを提案した.カリフォルニア州サンフランシスコ市長のJ. アリオト(1916-98)はこの提案を強く支持し,1970年に,3月21日(北半球における春分の日)をアースデイとして宣言した.当時の国連事務総長のウ・タント(1909-74)もこの宣言を強く支持した.

以後,3月21日はユネスコ制定のアースデイとして認識され,国連本部にある「日本の平和の鐘」が鳴らされるなど,各地で行われるイベント活動も現在まで続いているという.この3月21日のアースデイは,平和を目指す運動の一環として位置づけられている.

さて,仙台市天文台のアースデイ・イベントである.仙台市天文台は,以前は街中の西公園にあったのだが,地下鉄東西線が建設されることを受けて,郊外の錦ケ丘に移設された.新天文台は2008年4月に開台し,7月から一般公開が行われた.台長の土佐誠先生や意欲に満ちたスタッフによるアイデアと行動力により,種々のイベントが開催され,多くの来場者を得ている.日本でその活動がもっとも成功している天文台である.

2010年4月に行った第1回アースデイ・イベントもそのようなイベントの一つであった.私はこの第1回から,毎年講演を頼まれてきた.大変光栄なことである.なお,第1回のイベントでは,講演のほかにコンサートや,土佐先生と私の対談なども行われた.第2回以降は講演のみのイベントとなった.

翌2011年のアースデイ講演会は,東日本大震災からあまり日が経っていないこともあり,やむなく中止された.その翌年から再開され,今回で7回目となる.開催日は,4月22日に近い土曜日が選ばれ,講演は14時から15時30分までの90分,会場は加藤・小坂ホールである.このホールの収容数は100名程度なので,ポスターなどには定員100名としているが,実際の参加者は,おおよそ40名から60名程度である.以下,第1回から今年の第7回までの私の講演題名を記しておこう.

  • 第1回:2010年4月17日(土)(コンサートや対談も行われる)
    「いま地球で何が起こっているか~地球温暖化を中心として~」
  • (中 止:2011年4月23日(土)
    「最近の日本の気候の変調と地球温暖化」と題して話す予定であった)
  • 第2回:2012年4月21日(土)
    「海洋における放射性物質の広がり」
  • 第3回:2013年4月20日(土)
    「寒い冬や暑い夏にどうしてなるの?」
  • 第4回:2014年4月26日(土)
    「地球温暖化の現状~IPCC第5次評価報告書より~」
  • 第5回:2015年4月18日(土)
    「気象や気候に及ぼす海の影響~大気と海の相互作用について~」
  • 第6回:2016年4月23日(土)
    「エルニーニョと日本の天候」
  • 第7回:2017年4月22日(土)
    「海は泣いている~地球温暖化と海洋~」
上記のように取り上げた講演のテーマは,気象や気候と海洋の関係,あるいは地球温暖化と海洋に関するものである.そのような中で,2012年の第2回講演会は異色である.この年は,東日本大震災時の東京電力福島第一原子力発電所の事故により,海洋に漏出した放射性物質の広がりについて,観測や数値モデルによるシミュレーション結果について解説した.私自身,当時日本海洋学会の会長(2011年4月から2013年3月まで)であり,震災対応ワーキンググループの座長を務めていることもあり,このようなテーマにした.

さて,今回のアースデイ講演会のことである.今回のテーマを地球温暖化と海洋にしようと決めたのだが,サンゴの白化現象や海洋の酸性化で,海洋生態系は温暖化で痛めつけられていることを強調しようと,講演題名を「海は泣いている」とセンセーショナルなものにした.

そのような内容の話しを作っていたのであるが,この3月から4月にかけて,海洋のごみ問題,特にプラスチックごみの問題についての報道が幾つかなされたのである.NHK-BSでは,世界のドキュメタリーシリーズ「現代文明社会の死角」の一つとして「海に消えたプラスチック」(原題は,Oceans: the Secret of the Missing Plastic,制作はフランスVIA DECOUVERTE社,2015年)が3月9日に放送された(4月11日に再放送).

また,4月3日に,国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)は,「海底ごみの映像や画像を集めた『深海デブリデータベース』を公開~深海に沈むごみの情報を公開し,海洋環境に関する課題解決に貢献~」と題するプレスリリースを行った.NHKはこの発表を4月9日の朝のニュースでとり挙げていた.

このようなテレビ番組や報道に接し,これは本当に「海は泣いている」状態であるとし,急遽講演の前半で,この話題を取り上げた.私たちの身の回りにはプラスチック製品が溢れており,そして相当量のプラスチックが‘ごみ’として海に流れ込んでいる.それらは波などによる物理的破壊と紫外線による化学的破壊により次第に細片化され,ついには目に見えないほどの大きさにもなっていく.この小さなプラスチックごみをマイクロプラスチックと呼ぶ.

これらのマイクロプラスチックは生物の体内に取り込まれることが多く,実際,魚や海鳥の多くから検出されている.厄介なのは,これらのマイクロプラスチックの表面には細菌や有害な化学物質が付着しやすいことだという.PCBなどの有害化学物質の付着も見つかっており,生物体内に取り込まれると濃縮され,ついには魚を食べる人間の体内にも入りうるとの懸念がある.

また,最初からマイクロプラスチックを使用している製品もある.一部の化粧品や歯磨き剤に,研磨剤としてビーズ状のものを入れているのである.これらは通常マイクロビーズと呼ばれている.家庭での使用であるが,マイクロビーズは陸上で処理されることなく,最終的には海へと流出するものと推定されている.

このため,米国などではマイクロビーズの使用を禁止する法律が制定され,来年中にはマイクロビーズを使用した製品の販売が出来なくなるという.日本での規制はまだであるが,早急な対応が求められよう.

さて,今年のアースデイ講演会にも多くの方が来て下さった.講演の後,昨年に続いて参加しました,と声をかけてくださった方も何人かおられる.来年も講演を行うことができることを願っている.


2017年5月10日記


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