ダナ・ウィナーのワン・モーメント・イン・タイム
ネットサーフィンをしていて偶然に出会ったのが,ダナ・ウィナー(Dana Winner)が歌うワン・モーメント・イン・タイム(One Moment in Time)である.曲はソロピアノの伴奏の中でつぶやくように静かに始まり,最後は神に願いが届くようにとの力強い訴えと期待を叫んで終わる.大熱唱の曲である.聞き終わった瞬間,何とも言いようのない心持になった.感動したということだろう.大げさな表現であるのだが,人生にはこのような出会いがあるのだと思う.

ダナ・ウィナーという歌手も,ワン・モーメント・イン・タイムという曲も,私はどちらもそれまで全く知らなかった.とても素晴らしい歌手であり,そしてとても素晴らしい曲であるので,インターネットで調べてみた.

まずこの曲のことである.この曲はホイットニー・ヒューストン(Whitney Houston,1963.8.9-2012.2.11)が歌い,世界中で大ヒットしていたことわかった.作曲は「カリフォルニアの青い空」で有名な英国出身のシンガーソングライターのアルバート・ハモンド(Albert Hammond,1944.5.18-),作詞は「トップ・オブ・ザ・ワールド」などのカーペンターズの曲の大半で詞を提供している米国出身のジョン・ベティス(John Bettis,1946.10.24-)である.

もともとこの曲は,1988年にソウルで行われた夏季オリンピックのとき,米国三大ネットワークの一つであるNBC(National Broadcasting Company)が放映するオリンピック番組のオープニング曲として作られたのだという.初めはアルバム「1988 Summer Olympic Album:One moment in Time」の中に収められ,すぐにシングル曲としてもリリースされた.

この曲は世界中で好意的に受け止められた.米国ビルボード誌Hot100では5位まで上り詰め,ヨーロッパでもほとんどの国で10位以内のランクされた.中でも英国とドイツでは1位になったという.一方,日本では,オリコンチャートの最高位が73位と,あまり話題にならなかったようだ.

このヒットでホイットニーは1989年のグラミー賞候補となったが,受賞には至らなかった.しかし,受賞式のオープニングでこの曲を歌ったパフォーマンスが圧巻だったという,その映像をYouTubeで今でも観ることができる(末尾のURL①).

確かにオリンピック番組のテーマ曲であれば多くの人の耳に入るだろう.その上,その曲が心打つ曲であれば,人気が出るのは当然である.日本でも同じ状況ではなかろうか.NHKもオリンピック番組にテーマ曲を設けている.1996年にアトランタ夏季オリンピックの大黒摩季の「熱くなれ」や,2004年アテネ夏季オリンピックのゆずの「栄光の架橋」は,私のお気に入りである.

さて,歌手のダナ・ウィナーである.英語版Wikipediaによると,ダナは1965年2月10日にベルギーのハッセルトに生まれている.フランダース(フランス北東部からベルギー北西部),南アフリカ,オランダで著名だという.1990年ごろから歌手活動を始め,カーペンターズのトップオブザワールドをはじめとし,多くのミュージシャンの曲をカバーするなどして,ドイツと南アフリカで人気がでたらしい.

日本語のWikipediaにはダナは扱われていないが,アルバムが販売されているので画像はかなり出てくる.YouTubeでも多くの曲が取り上げられているし,Amazonの通信販売サイトでは9枚のCDが紹介されていた.しかし,世界中で知られている歌手でもなく,日本でも知られているとは言い難いのではなかろうか.実際,周囲の人に聞いてみたが,知っている人は誰もいなかった.

さて,ダナのワン・モーメント・イン・タイムであるが,いくつものバージョンがYouTubeに収められている.私が推薦したいのは,スタジオで少数の人たちを対象としたコンサートでのパフォーマンスを録音・録画したものである.これにもいくつのバージョンがあるが,現在1800万回も再生されたバージョンを推薦したい(URL②).

ホイットニーのワン・モーメント・イン・タイムもとてもいい.ホイットニーの歌唱力は圧巻であり,迫力がある.しかし,言葉で言い表すことは大変難しいが,曲の最後の方に向かって期待と願いとが次第に強くなっていく心の変化の表現は,ホイットニーよりもダナの方が勝っているように思える.少なくとも私には,ダナの歌唱の方がピンと来るのである.

YouTubeには,これ以外にもダナが歌う多くの曲が取り上げられている.ダナは積極的に他の歌手のカバーをしているようで,サイモンとガーファンクルのサウンド・オブ・サイレンスなど,世界的ヒット曲が聴ける.透き通った声で声量豊かなダナの歌は,何度聴いても飽きがこない.

ところで,ワン・モーメント・イン・タイムの題名と歌詞のことである.歌詞の文章は全く単純で,難しい言葉もまったく使われていない.しかし,日本語にどのように訳せばいいのか迷ってしまうところもある.例えば,歌詞の最後の部分は次のようなものである.ただし,繰り返しのところ(refrain)は省略する.

Give me one moment in time
When I’m more than I thought I could be
When all of my dreams are a heart beat away
And the answers are all up to me
Give me one moment in time
When I’m racing with destiny
Then in that one moment of time
I will be free

この歌詞に対し,インターネットで検索すると多くの和訳が見つかった.日本語でカバーした人がいないので,訳詞家の公式(?)和訳歌詞がないのに違いない.そこで,歌詞を和訳することでも,皆さん楽しんでいるのだろう.以下,4つの和訳を紹介する.

和訳1(URL③)
私にその一瞬をください
私が私以上のものになれる瞬間
全ての夢があと一つの鼓動の先に解け去り
答えが私にゆだねられる瞬間
その一瞬を私にください
私が運命と競争している時
その瞬間の中で私は
自由になれるのでしょう

和訳2(URL④)
その瞬間を私にくれ
自分がなれると思っていた以上になる瞬間を
私のすべての夢が胸のときめきと去り
答えがすべて私に委ねられている瞬間を
その瞬間を私にくれ
私が運命と競争している瞬間を
そしてその瞬間にこそ
私は自由になるだろう

和訳3(URL⑤)
私にその一瞬をください
私が私以上のものになれる瞬間
全ての夢が 心臓の鼓動のように ずっと消えずに残り
その答えが私にゆだねられる瞬間 その一瞬を私にください
私が運命と競争している時
その瞬間の中で私は自由になれるだろう

和訳4(URL⑥)
私に,与えておくれ,ほんの僅かな一瞬を
私がなれると思った以上の,私がいる瞬間を
鼓動1つ分ほどの距離に,私の夢のすべてが,迫りくる瞬間を
そして,その答えは,すべて,私に懸かってる
私に,与えておくれ,ほんの僅かな一瞬を
運命と競い合っている,まさにその瞬間を
その時,その競い合う,一瞬の中でこそ,
私は・・・,私は・・・,私は,解放されるのだろう!
私は・・・,私は,自由になるのだろう!

さて,三行目の歌詞の解釈をどうするのか,迷うのではなかろうか.実際,上記の和訳でも,解釈は分かれている.皆さんはどの和訳がしっくりくるだろうか.この三行目に関しては,私は和訳4を取りたいのだが….

ところで,あるウェブサイトで最後の「I will be free」に対し,「私は無料になります」との和訳が載っていた.えー,ご冗談? ブラックジョーク?

【URLアドレス:2019年4月上旬確認】
① https://www.youtube.com/watch?v=c84ogrNEds0&list=RDc84ogrNEds0&start_radio=1
② https://www.youtube.com/watch?v=Tb6AW00DgTI
③ http://wayakutry.blog40.fc2.com/blog-entry-200.html
④ http://asianews.seesaa.net/article/405334930.html
⑤ http://blog.livedoor.jp/ottorinayatu/archives/54135610.html
⑥ https://ameblo.jp/susse-liebe/entry-12170798763.html


2019年4月10日記


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