巣ごもりの中から その1
世界保健機関(WHO)により「COVID-19」と命名された新型コロナウィルス感染症が蔓延する中,世界中の人たちが強制・自制を問わず,毎日を自宅で過ごすことを余儀なくされた.もちろん,私もその一人である.このような状態を,メディアでは「巣ごもり」と表現していた.確かに言いえて妙,まさに巣ごもりに違いない.

この巣ごもりの間に,あれやこれやと考えたことややったことなど,取り留めのないことばかりなのだが書き留めておこうと思いたった.

1.世界史に残る出来事

この1月,中国の武漢市で感染症が蔓延し,多くの市民が入院したり,亡くなったりしているとの報道が起こった.次第に事態が深刻になっていく中,中国政府は1月23日(木)に,人口約1100万人の武漢市を都市封鎖(lockdown:ロックダウン)する措置をとった.

1月の中ごろから,どうも今回の感染症は世界中に蔓延するのではないかとの胸騒ぎのようなものがあり,私は連れ合いや周りの人に,私たちは今,「世界史に残る出来事」の中にいるようだ,と話していた.そしてこの予感は現実となった.

感染症は21世紀に入ってからだけでも,2002年から03年にかけてのSARS(重症急性呼吸器症候群),2009年のH1N1亜型インフルエンザ,2012年から13年にかけてのMERS(中東呼吸器症候群)など,枚挙にいとまがない.

しかしながら,その規模の点からは今回のCOVID-19のほうが圧倒的に世界規模である.実際,WHOのウェブサイトによると,6月9日GMT9時(日本時間午後6時)現在,世界での感染者は703万9918人,死亡者数40万④396人で,216の国や地域に拡がっている.

多くの識者は,今回の規模は1918(大正7)年から1920(大正9)年にかけて世界中で蔓延した「スペイン風邪」に匹敵すると指摘している.スペイン風邪は,感染者が世界で約5億人,死亡者は1700万人から5000万人であったと推定されている.日本でも2380万人が感染し,39万人が死亡したと推定されている.そして,当時進行中であった第一次世界大戦は,このスペイン風邪が終結させたとも言われている.

さて,「世界史に残る」と表現したが,一体,どのような形で残るのだろうか.この感染症が終結した後,どのような新しい世界になるのであろうか.私自身はそのような新しい世界の創生には何の力にもなれないだろうが,見見届けたいとは思う.願わくは,この出来事の前よりは良い世界となってほしいのだが、どうなのだろう.

2.非常事態宣言と東北大学の対応

今回の新型コロナウィルス感染症の発生に関し,東北大学は4月7日(火)にBCPを公表し,同日現在,対応はレベル2にあるとの発表を行った.その後,全国や宮城県の感染者の動向を踏まえ,逐次対応レベルを変更してきた.備忘録として,末尾にそのレベルの推移と,政府による非常事態宣言の発令とその解除の日をまとめておく.

BCPとは,Business Continuity Planの略で,日本語では通常「事業継続計画」と呼ばれている.緊急時に組織としてとるべき対応を示したものである.東北大学のウェブサイトでは,「東北大学の行動指針(BCP)-新型感染症拡大防止のための学内制限-」と呼んでいる.

今回のBCPでは,レベル1からレベル5までの対応が定められた.例えばレベル4とは,ウェブサイトに示された簡略な表現では,研究:交代制,授業:オンラインのみ,課外活動:全面禁止,学内会議:オンラインのみ,事務体制:原則在宅勤務,である.

レベル4では,学生はもちろん,教職員もキャンパス内への立ち入りは厳しく制限され,必要最低限の入構しか認められない.理学研究科・理学部では,学生は指導教員からの許可が必要で,教員も含めて入構に際しては事前・事後に届け出る必要がある.

さて,私の巣ごもりであるが,その開始日はレベル3の告示日の翌日の4月9日(木)からである.以来現在まで,既に丸2か月が経った.この間,原則ほとんどの時間を自宅マンションで過ごしている.なお,今月の1日(月)に東北大学はレベル2の対応となったが,私自身は現役の方々へ迷惑をかけてはいけないと思い,また,今月と来月いっぱいにかけて,たくさんの資料を読み込まなければいけないこともあり,当面巣ごもりを続けようと思っている.

<東北大学の対応レベルの変遷>
・4月7日(火):レベル2
・4月8日(水):レベル3
・4月17日(金):レベル4
・5月18日(金):レベル3
・6月1日(月):レベル2

<政府による非常実態宣言と解除>
・4月7日(火):7都府県に宣言(5月6日まで)
<東京・埼玉・千葉・神奈川・大阪・京都・兵庫>
・4月16日(木):全都道府県に拡大(5月6日まで)
・5月4日(月):期間を5月31日(日)まで延長
・5月14日(木):39:県で解除
・5月21日(木):3府県で解除
<大阪・京都・兵庫>
・5月25日(月):5都道府県で解除
  <北海道・東京・埼玉・千葉・神奈川>

3.毎日の散歩

これまでの私には日常的に散歩をする習慣はなかった.それが,巣ごもりを開始した日の夕方,散歩をしようと急に思い立った.当日の朝,新聞を取りにマンション1階のエントランスに行った後はずっと部屋の中だけで過ごしていたため,ストレスがかかっていたのがきっかけだったのだろう.その日はマンションの部屋から眼下に見える西公園付近をぶらぶらと歩いた.時間はおおよそ1時間程であったろう.

その日以来,雨の日を除いて毎日散歩に出かけることとした.人込みを避けるということで,当初は南の端を青葉通り,北の端を定禅寺通り,東の端を晩翠通り,西の端を桜ケ丘公園と西公園に設定し,この区画内の道を歩いていた.今まで一度も歩いたことのない裏道まで含めて適当に歩いていた.

その後,一体何歩くらい歩いているのだろうと気になり,歩数計を購入し毎日の歩数を測ることとした.なお,万歩計と使いたくなるが,万歩計はある会社の商品名であるのだそうだ.今回購入したのは別会社の製品で,3次元加速度センサーが使われている優れものである.実際,自分でも歩数を測って比較してみたところ良い一致を示した.

歩数に関し,一か月以上のデータが溜まった.多い日で10,000歩,少ない日で6,000歩,平均8,000歩程度であった.もちろん,雨の日で本当に巣ごもっている日は2,000歩以下と激減する.

毎日新聞5月17日(日)の「日曜クラブ」の3面に,「福田千晶の暮らしの健康法」の記事があった.「運動不足を自覚する皆様へ」と題する記事で,ウォーキングやジョギングなどの日常運動を勧めていた.その中で,ウォーキングの目安は,厚生労働省が定めた「健康日本21(第2次)」によると,目標は20~64歳の男性9,000歩,女性8,500歩,65歳以上の男性7,000歩,女性6,000歩であると紹介していた.したがって,私の場合はおおむねこの目標はクリアーしているようである.

さて,この散歩,当初定めた区画の中だけでは変化に乏しく,すぐに飽きてしまった.その後少しずつ拡大していった.いろいろと歩いている中で,お気に入りのコースもできた.以下は現在のお気に入りのコースである.まず立町のマンションから晩翠通りに出て西に向かい,青葉通りと五橋通りを渡って大手町に入る.大手町の広瀬川に沿った遊歩道を上流に向かい大橋に出て,大橋を国際センターに向けて渡る.次に、国際センター手前の広瀬川に沿った遊歩道を二高の方へ抜け,今度は中(仲)の瀬橋を桜ケ丘公園の方へ戻る.桜ケ丘公園では反時計回りに周辺歩道を歩く.その後西公園通りと広瀬通り交差点の歩道橋を渡り,西公園側に出る.西公園では周辺歩道を時計回りに回り,市民会館の裏を通り,再び西公園通りに出る.そして定禅寺通りを経て立町に戻るコースである.このコースの歩数は約7,000~8,000歩,時間にして1時間10分~20分程度である.

このような散歩,今後習慣になるのだろうと思っている.いや,どこに住んだとしても,日常の習慣にしなければならないのだろう.私の‘new normal’の一つとして.

2020年6月10日記