気候科学への信頼度
先月24日の毎日新聞に,「気象科学信頼 日本25%/スイス・研究所調査 世界平均50%超」(/は見出しの区切り)なる記事が掲載された.同紙科学環境部の大場あい記者による報告である.スイスのシンクタンク世界経済フォーラム(WEF)が,気候科学への信頼度について世界30か国で調査した.その結果,科学者の発言や研究成果について,「非常に(a great deal)信頼」と「かなり(a lot)信頼」を合わせた割合は,30か国の平均が57%であるの対し,日本は25%であったという.この数字は米国の45%をも下回っていた.

この日本の数値は私にはとても信じられないので,どういう調査なのだろうとWEFのウェブサイトで探してみた.しかし,どうしてもその報告が探せず,大場さんに資料が掲載されているURLを教えてくれるよう頼んでみた.大場さんとは昨年春に毎日新聞社を訪問したおりに挨拶を交わしていた.大場さんからはすぐにURLの情報とともに,「サンプリングバイアスや質問票の日本語訳に問題があった可能性もあるかと思いまして,世界経済フォーラムに問い合わせをしております.(略)他の質問も含めて、非常に興味深い調査でありますので,さらに詳しいデータが入手出来次第,詳報できればと考えております」との返事をもらった.

今年のWEF年次総会は,スイスのダボスで1月21日から24日まで開催された.上記の報告はその初日に公表された.世界30か国,1万500人へのアンケート調査で,日本人は316人が回答した,なお,回答者がどのように選抜されたのかは不明である.調査結果のほとんどは人口が同程度になるように分けられた9つの地域で示されていたが,「気候科学への信頼度」は国別に示されていた.それによると,「非常に」と「かなり」信頼の合計は,最も高い国はインドで86%,以下,バングラデッシュ78%,パキスタン70%,中国68%と続く.一方,最も低い国はロシアで23%,続いて日本25%,ウクライナ33%,アメリカ45%,フランス47%と続く.ロシアと日本の極端な低さが際立つ.

さて,日本人は,挨拶や手紙などでまず時候を取り上げるように,天気や天候に極めて関心が高い,また,テレビやラジオでは,毎日何度も天気予報が流れ,主なニュースでは,気象予報士の資格を持つキャスターが天気や天候,そして気候について解説している.私自身は日本人の‘気象・気候リテラシー’は高く,また様々な機会を通して地球温暖化などの情報に接しているので,気候科学への信頼度も高いと考えていた.今回の調査結果は,その期待を全く裏切るものである.気候予測の難しさを知っているがゆえの低さなのであろうか.さて,大場さんはWEFに調査の詳細を問い合わせているという.続報に期待したい.

2020年2月20日記

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