2020年は史上最も気温の高い3年の中に入った |
世界気象機関(WMO)は今月(2020年1月)14日,「2020 was one of three warmest years on record」と題するプレス発表を行った(URLを末尾に示す).世界中の5つの地表面気温のデータセットを分析した結果である.5つのデータセットとは,@米国海洋大気庁(NOAA),A米国航空宇宙局ゴッダード宇宙研究所(NASA-GISS),B英国気象局ハドレーセンター/イーストアングリア大学気候研究ユニット(HadCRUT),Cヨーロッパ中期予報センター/コペルニクス気候変動サービス(ECMWF/CCS),そしてD日本気象庁(JMA)である.これらは学術的に最も定評のあるデータセット群である. 各データセットで2020年の気温は,NASA-GISSとECMWF/CCSでは2016年と並び史上第1位,NOAAとHadCRUTでは2016年に次ぐ第2位,JMAでは2016年2019年に次ぐ第3位であった.WMOは,「これらのデータセット間の差異は,WMOによる全球平均気温を計算する際の誤差の範囲内に収まっている」とコメントした.プレス発表の表題はそれを受けたものである.全球平均気温(の‘正解’)は一つであるべきであるが,平均値作成の考え方や採用する処理法により,データセット間でばらつくのはやむを得ない.そのうえで,不確かさも含んでの平均気温であるとする社会への情報伝達が重要であることを物語っている. この発表には,「Cooling La Nina event failed to tame the global heat (ラニーニャによる冷却も全球的な加熱の抑制に失敗した)」なる副題もついていた.昨年夏ごろからラニーニャが起こり現在も進行中であるからである.エルニーニョやラニーニャは,全球平均気温に大きな影響を及ぼすことが知られている.エルニーニョ(ラニーニャ)が起こると全球平均気温は,年平均で0.1〜0.2℃上昇(下降)することが知られている.史上最大の‘1997/98エルニーニョ’が起こっていた1998年の全球平均気温は,2014年に破られるまで史上最高であった.また,現在史上最高である2016年も,史上第3位(第2位とする見方もある)のエルニーニョが起こっていた年である. このような背景からWMOはラニーニャが起こっているにも関わらず最高気温であるとし,地球温暖化が急速に進行していることへの警鐘を鳴らしたと言える.記事の最後には将来予測も示しており,2024年には5分の1の確率で,産業革命以前(1850〜1900年までの平均)の気温より1.5℃高い状態になるかもしれないとしている.また,英国気象局は,2021年は史上最高を更新するのではないかとも予想しているという. 【この記事を掲載したWMOのURL】 https://public.wmo.int/en/media/press-release/2020-was-one-of-three-warmest-years-record 2021年1月20日記 |