2021.04.30
プレスリリース
巨大地震発生箇所のプレート下に異常構造を発見 ―構造異常体が巨大地震の発生に影響―
M9.0以上の巨大地震の発生メカニズムについてこれまで数多くの研究が行われましたが、多くの未解明な点が残されています。本専攻 沈み込み帯物理学分野の趙大鵬教授とJianke Fan博士(PD研究員、現在は中国科学院青島海洋研究所 准教授)は、地震波トモグラフィー法を用いて、これまでにM9.0以上の巨大地震が起った、日本列島を含む世界の6つの沈み込み帯の地下の詳細な3次元地震波速度構造を調べました。その結果、沈み込んでいる海洋プレート下のマントルに顕著な低速度異常体が存在することが明らかになりました。これらの低速度異常体の位置と、巨大地震の震源位置や破壊範囲に顕著な関連性が見られ、異常体の存在が巨大地震の発生や範囲に影響を及ぼしたと推測できます。本研究成果は、巨大地震発生メカニズムの解明およびその震源位置と破壊範囲の予測への重要な手がかりとなります。
本成果は、4月27日(日本時間)に英科学誌「Nature Geoscience」に論文としてオンライン掲載されました。詳しくは理学研究科のプレスリリースの頁と東北大学のプレスリーリスの頁をご覧ください。
図.本研究の結果を示す模式図。沈み込んでいる海洋プレート(スラブとも呼ぶ)と上盤の大陸プレートをそれぞれ青色と灰色で示す。赤星印はM9.0以上の巨大地震の震源(破壊の開始点)。黒色のコンター線は巨大地震の破壊範囲。SLVA: スラブ下の低速度異常体。SLVAG: スラブ下の低速度異常体のギャップ。紫色と緑色の太い線はそれぞれSLVAとSLVAGの上方にある断層面(megathrust)上の部分。本研究によって、巨大地震の発生ならびに破壊範囲はSLVAGの上部であり、SLVAの上部ではないと推測される。