東日本下に動かないマントルを発見:新たな海域地震観測網が明らかにした日本列島下の流動構造
沈み込み帯でマントルの中に沈み込んでいる冷たく硬い海のプレートの動きは,表層地殻と沈み込むプレートの間にあたるマントル(マントルウエッジ)の温度が高いと,そこにゆっくりとした流動を生じさせ,この流動は日本列島下の様々な動きの原動力となっています.本専攻の沈み込み帯物理学分野(地震・噴火予知研究観測センター)の内田直希准教授らの研究グループは,東京工業大学中島淳一教授,防災科学技術研究所浅野陽一主任研究員らとの共同研究により,同研究所の日本海溝海底地震津波観測網(S-net)が捉えた地震波形データを分析することで,太平洋下から北海道・東北地方沿岸部までのマントルウエッジ内では流動が生じていないことを明らかにしました.日本海側では流動が見られるという,陸上の地震観測にもとづく先行研究の結果とは対照的です.地表付近の温度の観測とシミュレーションによって予想されていたことではありますが,それを実測した初めての成果です.
本研究成果は,学術雑誌Nature Communicationsに令和2年11月10日(火)付けで,以下のようにオンライン公開されました.詳しくは東北大学と理学研究科のプレスリリースの頁をご覧ください.
Uchida, N., J. Nakajima, K. Wang,R. Takagi, K. Yoshida, T. Nakayama, R. Hino, T. Okada and Y. Asano Stagnant forearc mantle wedge inferred from mapping of shear-wave anisotropy using S-net seafloor seismometers. Nature Communications, 11, 5676 (2020). https://doi.org/10.1038/s41467-020-19541-y
(沈み込み帯物理学分野の共著者に下線を引いています).