太田雄策准教授らが開発に携わる "REGARD" の活用に向けた産学官連携協定が締結
国土交通省 国土地理院、国立大学法人 東北大学及び東海旅客鉄道株式会社の3者は、災害発生時のリアルタイム津波浸水被害予測の高精度化、津波への対応力の強化を目的に、地震・噴火予知研究観測センター(沈み込み帯物理学分野)の太田雄策准教授らが開発に携わる電子基準点リアルタイム解析システム(REGARD)による推定結果の提供及び活用に向けた産学官連携の協定を締結しました。
1.概要
駿河湾から日向灘にかけての南海トラフ沿いでは、マグニチュード8を超える巨大地震が、概ね100~150年間隔で繰り返し発生してきました。前回の南海トラフ地震(1944年昭和東南海地震及び1946年昭和南海地震)から75年以上が経過し、大規模地震発生の切迫性が指摘されています。南海トラフ沿いで大規模地震が発生した際には、甚大な被害の発生が想定されており、地震防災対策を進める必要があります。
これまで、国土地理院は、太田雄策准教授らと共同で、政府機関における地震発生時の初動対応を目的として、全国約1,300点の電子基準点における地殻変動を自動で計算し、リアルタイムで地震規模や岩盤のずれを推定する、REGARD(リガード:Real-time GEONET Analysis system for Rapid Deformation Monitoring)を開発し、平成28年4月から運用を行っています。
また、東北大学は、地震規模、地殻変動データ、地形データを入力値としてリアルタイムに津波浸水被害予測を実施するフォワード型のシステム(リアルタイム津波浸水被害予測システム)を構築し、これにより大規模地震発生後30分程度で各地点の津波浸水深・範囲、建物被害等の予測が可能になっています(図)。
東海旅客鉄道株式会社(以下「JR 東海」という。)では、これまで鉄道構造物や建物の耐震化、東海道新幹線の脱線・逸脱防止対策、地震発生時に列車を自動的に停止させる地震防災システムのほか、地震防災訓練など、ハード・ソフトの両面で地震時の安全対策の強化に取り組んできました。
今回、REGARD情報を国土地理院から東北大学及びJR東海に提供し、リアルタイム津波浸水被害予測の高精度化、津波への対応力の強化を目指すことで合意し、これに関する産学官連携の協定を令和4年12月12日付で締結しました。
2.今後の具体的な取組み
(1)リアルタイム津波浸水被害予測システムの迅速化と高度化
REGARDで推定した岩盤のずれの情報をリアルタイム津波浸水被害予測システムに組み込むことにより、各地点の信頼性の高い津波浸水深と到達時刻の早期予測を目指します。
(2)津波への対応力の強化
JR東海では、南海トラフ地震で発生する津波に備え、防災計画を策定しており、津波警報と自治体の津波ハザードマップに基づいて避難誘導し、お客様の安全確保に努めています。今後、REGARD情報及びリアルタイム津波浸水被害予測システムを用いて、地震発生時における津波浸水深や到達時刻をリアルタイムに予測することで、地震発生時の津波に関する情報を鉄道運行の現場により正確かつ迅速に配信することを目指します。