飛行機を揺らす見えざる脅威を可視化 ~東京湾上空で発生した晴天乱気流をスーパーコンピュータ「富岳」で再現~
本専攻 気象学・大気力学分野の伊藤純至准教授と名古屋大学宇宙地球環境研究所特任助教の吉村僚一氏(研究当時:東北大学流体科学研究所・東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻)および東北大学流体科学研究所の焼野藍子助教らは、冬季の東京湾上空3-4 kmでしばしば発生する晴天乱気流事例について、数値気象モデルで格子幅を35 mまで狭めた超高解像シミュレーションを実施し、乱気流の様子を再現しました。また、当時の飛行機が記録した揺れデータと比較することで、再現した乱気流が正しいかを調べました。35 m級の解像度で再現した高高度の大気中の乱流現象を観測データにより検証する取り組みはなく、世界初の成果です。高高度で発生した現実の乱気流事例を対象とした乱気流の計算例は少なく、実際の乱気流の観測データとの比較は初めての試みです。
高解像シミュレーションにより、乱気流の発生原理・仕組みの解明や、乱気流が飛行機へ及ぼす影響をさらに詳しく調べることにつながると考えられます。また、航空事業者向けにより精度の高い乱気流予報を行えるようになることも期待できます。本研究成果はAmerican Geophysical Unionの論文誌 Geophysical Research Lettersに掲載されました。
論文情報
タイトル:Clear Air Turbulence Resolved by Numerical Weather Prediction Model Validated by Onboard and Virtual Flight Data
著者:Yoshimura, R.*, Ito, J., Schittenhelm, P., K., Suzuki, A., Yakeno, A., and Obayashi, S.
*責任著者:名古屋大学 宇宙地球環境研究所 特任助教 吉村僚一
(研究当時:東北大学流体科学研究所・東北大学大学院工学研究科 大学院生)
掲載誌:Geophysical Research Letters
出版日:2023年6月21日
DOI番号:https://doi.org/10.1029/2022GL101286