2024.03.14
プレスリリース
地球のマントル中部に地震波異方性を発見 ―地震と火山噴火の根本原因の理解に重要な手がかり―
【発表のポイント】
- フィリピン海の海底からの深さ700-1600 kmに顕著な地震波速度異方性を発見しました。
- マントルの中部と下部に現在のプレート沈み込みと無関係の古い異方性構造が存在します。
- マントル対流と地球深部ダイナミクスを理解する重要な手がかりとなります。
【概要】
地球内部の岩石には、地震波の伝播する方向によって速度が異なる「地震波速度異方性」という物理的な性質があります。この性質は地球内部での岩石の変形やプレート内の応力場、およびマントル対流のパターンなどを反映していると考えられます。
東北大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センターの趙大鵬教授と中国科学院海洋研究所の範建轲 (Jianke Fan) 教授、李翠琳(Cuilin Li)准教授と董冬冬(Dongdong Dong)教授、及び中国科学院地質と地球物理研究所の劉麗軍(Lijun Liu)教授は、趙教授が開発した最新の地震波トモグラフィー法を用い、フィリピン海下深さ1600キロメートルまでの3次元地震波速度異方性構造を明らかにしました。これにより、マントルの中部と下部に現在のプレート沈み込みと無関係の異方性構造を発見し、約5千万年前の太平洋下部マントルフローの残り物であることがわかりました。本研究成果は、地震と火山噴火の根本原因であるマントル対流と地球深部ダイナミクスを理解する重要な手がかりになります。
本成果は、科学誌Nature Geoscienceに3月12日19時(日本時間)に論文としてオンライン掲載されました。
図1. フィリピン海プレート(Philippine Sea Plate)とその周辺地域の地形図。カラー三角は本研究で利用した地震観測点。緑三角は国際地震センターがコンパイルした定常観測点。赤三角は東京大学地震研究所が展開した海底地震観測点。紫三角は中国科学院海洋研究所が設置した海底地震観測点。鋸歯状線は海溝(trench)を表し、プレートが地球内部へ沈み込む入口である。
- 論文タイトル: Remnants of shifting early Cenozoic Pacific lower mantle flow imaged beneath the Philippine Sea Plate
- 著者: Jianke Fan, Dapeng Zhao, Cuilin Li, Lijun Liu, Dongdong Dong
- 掲載誌:Nature Geoscience
- DOI:10.1038/s41561-024-01404-6
- URL: https://www.nature.com/articles/s41561-024-01404-6
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