Topics 2016.02.01

人工衛星を利用した海面水温観測の進展

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海の表面付近で測定された水温を「海面水温(Sea Surface Temperature, SST)」といいます。冒頭の図は、日本付近の海面水温分布図の一例です。海面水温は、海の熱的な状態に応じて変化し、気候の変動を知るための指標の1つです。天気予報で使用する数値モデルの下部境界条件としても使用されています。また、海面水温分布図から、海流や渦などの海洋の構造を知ることも出来ます。

海面水温は時間的に一定ということはなく、空間的にも一様でもありません。時々刻々と変化する海面水温を、地球全体に渡って、可能な限り、すみずみまで観測するのに、人工衛星による観測が利用されています。人工衛星は、船舶などに比べて機動性に優れていて、広域を、繰り返し観測するのに適しているからです。

人工衛星による海面水温観測には、衛星に搭載されたセンサがとらえた海面からの「光」を利用します。「光」といっても、人間が見ることが出来る可視光ではありません。赤外線やマイクロ波帯の「光」を観測し、それを、物理法則等を利用して「海面水温」に換算する技術が、これまで開発されてきました。

人工衛星による海面水温観測が開始されたのは1980年代からです。その代表的な衛星とセンサは、アメリカ海洋大気庁の極軌道衛星NOAAシリーズとそれに搭載されたAVHRR(Advanced Very High Resolution Radiometer)です。AVHRRは、赤外線を利用して、1~7kmの空間解像度で海面水温を観測しました。

2000年代からは、赤外線を利用した観測に加えて、マイクロ波を利用した観測が実用化されました。その代表的なセンサは日本が開発したAMSR(Advanced Microwave Scanning Radiometer)シリーズです。アメリカのAqua衛星に搭載されたAMSR-Eは、2002年~2011年まで運用されました。その後は、日本の衛星「しずく(Global Change Observation Mission-Water, GCOM-W)」に搭載されたAMSR2に引き継がれています。

赤外線による観測とマイクロ波による観測には、それぞれ、一長一短があります。赤外線を利用した場合、空間解像度は高いのですが、雲に覆われた海域は観測できません。一方、マイクロ波を利用した観測では、空間解像度は粗いのですが、雲の影響をあまり受けません。それで、赤外観測とマイクロ波観測のそれぞれの長所を出来るだけ活かすように、両者を融合処理する手法が開発されています。

海面水温観測の状況を大まかにまとめると、今日では、船舶等による観測、人工衛星による赤外観測やマイクロ波観測、観測データの融合処理手法などを駆使して、全ての海域を対象に、1-50kmの空間解像度で、1日1回はデータが作成される体制となっています。将来については、例えば、2014年に打上げられた「ひまわり8号」に搭載されたAHI(Advanced Himawari Imager)は、太平洋西部の海域を10分間隔で観測しています。JAXA(宇宙航空開発機構)は、空間解像度のより高いセンサの運用を計画しています。衛星による海面水温観測はより緻密になり、1日より短い時間で変化する現象や、スケールの小さい現象等について、新たな知見が得られることが期待されています。

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図1. 大気海洋変動観測研究センターで作成した2014年1月1日のFoundation SST(日変化の影響を補正した融合海面水温)。冒頭の海面水温分布図は、この同じデータの日本付近を拡大したもの。

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図2. 「ひまわり8号(バンド13)」が観測した2015年3月26日の東北沖の水温変動。GIFアニメが表示される環境では、画像中央に見える暖水塊が回転している様子をみることが出来ます(世界時9時~21時までの、3時間毎の画像から作成)。

 

リンク : 大気海洋変動観測研究センター 衛星海洋学分野

(文責 : 大気海洋変動観測研究センター 衛星海洋学分野 准教授 境田 太樹)

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