Topics 2018.01.17

シータオーロラの謎が明らかに

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図1. 北極域に出現したシータオーロラの画像(Obara et al. GRL, 1988) 。一本の筋が真夜中から真昼に向かって伸びている。

オーロラを宇宙から観測すると大きな楕円に見えます。その中心は磁極ですが、非常にしばしば、図1のように、1本の棒状のオーロラが、楕円(オーロラオーバル)の中に入り込むことがあります。横から見ると、ギリシャ文字のθ(シータ)に見える事から、シータオーロラと呼ばれています。発見された1980年代、筆者は、このオーロラの筋が、北極と南極に同時に出現することを見出しました(Obara et al.,GRL,1988)。その後、シータオーロラの出現特性を調べて行くと、太陽風が運んでくる磁場(太陽風磁場)の南北成分が北を向き、かつ、東西成分が反転する事がきっかけとなって出現する事が分かりました。

2000年になって、スーパーコンピュータの能力が大幅に向上したので、計算でシータオーロラを再現する試みを九大の田中教授と始めました。太陽風磁場の東西成分を反転させたところ、オーロラの原因であるプラズマシートが大きく変形して、シータオーロラが生成されていく様子が分かりました(Tanaka, Obara, Kunitake, JGR, 2004)。

今回、太陽風磁場の東西成分を、朝向きから夕方向きに反転させてシータオーロラを作った上で、そこに磁力線を描いたところ、シータオーロラの棒の部分の磁力線は閉じていて、南北の棒を結んでいることが分かりました(Tanaka, Obara et al., 2017)。以下に、簡単に説明します。

図2は、北半球の高緯度を夜側から見ています。手前は真夜中、向こう側が真昼、右が朝側、左が夕方側です。オーロラオーバルと1本の棒が見えます。図の中に、3種類の磁力線を色分けて描きました。シータの棒からマゼンダ色(THETA)で、夕方側のオーバルからは赤色(LLCL/ELC)で磁力線を描きました。今回見つかった面白い構造は、シータの棒が昼側のオーバルと接するあたりにあり、ピンク色で磁力線を示しています。ここは、南半球の朝側オーバルから出た沢山の磁力線(LLLC/MLC)が集まってくる場所で、専門の用語では、カスプと呼んでいます。 

図3は、南半球の高緯度を、夜側から見ています。手前(図の中央に対応)は、真夜中、向こう側(図の下側に対応)が真昼、右が朝側、左が夕方側です。オーロラオーバルと1本の棒が見えます。磁力線の色は図2と同じです。シータの棒からマゼンダ色(THETA)で、朝側のオーバルからはピンク色(LLCL/MLC)で磁力線を描きました。シータの棒が昼側のオーバルと接するところがカスプ領域で、赤色で示しています。北半球の夕方側オーバルから出た沢山の磁力線(LLLC/ELC)が集まってくる場所です。

今回の発見は、1) シータの棒の磁力線(THETA)が、南北両半球で閉じている事でした。そして、2) 北半球の夕方側のオーバルの磁力線が、北半球のシータオーロラの棒に昼側にカスプ構造を作っている事でした。同じことは、南半球についても言えます。

以上の様子を、図4にまとめています。図4は、地球の夜側から磁気圏を見た図で、横軸は赤道、上が北、下が南、右が朝側、左が夕方側です。シータの棒の磁力線(THETA)は、磁気赤道をほぼ垂直に横切り、南北両半球で閉じています。北半球の夕方側のオーバルの磁力線(LLLC/ELC)が、南半球で集中し、カスプ構造を作っています。同じことは、南半球についても言え、南半球の朝方側のオーバルの磁力線(LLLC/MLC)が、北半球で集中し、カスプ構造を作っていました。

ここでは、詳しく説明しませんでしたが、シータの棒は、太陽風磁場の東西成分の反転の違いにより、朝側から現れて夕方に向かって移動したり、逆の反転では、夕方側から現れて朝側に向かって移動したりします。そして、シータの棒の移動によって、新しい空隙な領域が出現し、冒頭に述べたように、シータオーロラが生まれます。

シータオーロラの成因が、スーパーコンピュータによって、概ね、明らかになりました。今は、現実に観測されたシータオーロラについて、太陽風磁場の実測値を用いて、再現出来るか否かについて、調べはじめています。

(文責 惑星プラズマ・大気研究センター 小原隆博教授)

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図2. 北半球のオーロラ領域の拡大図。シータの棒の磁力線をマゼンダ色(THETA)で、夕方側のオーバルの磁力線を赤色(LLCL/ELC)で、カスプ領域の磁力線をピンク色(LLLC/MLC)で描いている。ピンク色の磁力線は、南半球の朝側オーバルから出た磁力線(LLLC/MLC)である。

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図3. 南半球のオーロラ領域の拡大図。シータの棒の磁力線をマゼンダ色(THETA)で、朝方側のオーバルの磁力線をピンク色(LLCL/MLC)で、カスプ領域の磁力線を赤色(LLLC/ELC)で描いている。赤色の磁力線は、北半球の夕方側オーバルから出た磁力線(LLLC/ELC)である。

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図4. 地球の夜側から磁気圏を見た。水平は赤道、上が北、下が南、右が朝側、左が夕方側。シータの棒の磁力線(THETA)は、磁気圏赤道をほぼ垂直に横切り、南北両半球で閉じている。北半球の夕方側のオーバルの磁力線(LLLC/ELC)が、南半球で集中し、カスプ構造を作っている事。同じことは、南半球についても言え、南半球の朝方側のオーバルの磁力線(LLLC/MLC)が、北半球で集中しカスプ構造を作っている。

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