Topics 2020.04.24

太陽中性子の新しい観測

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図1: 宇宙飛行士や人工衛星を取り巻く宇宙環境(模式図)

地球を取り巻く宇宙空間には、図1に示すように、種々の宇宙放射線が存在している。具体的は、超新星爆発によって生まれる「銀河宇宙線」、太陽の表面爆発(フレア)で生成される「太陽放射線」そして、地球の磁場に補足された「バンアレン帯粒子」が、代表的な宇宙放射線である。

人工衛星や宇宙飛行士の宇宙における活動において、最大の脅威となるのは、太陽放射線である。太陽放射線は、太陽フレアに伴って生成されるが、I)黒点上空の磁力線のリコネクション(再結合)で生成されるケース、II)放出された太陽コロナガス(CME)の前面に形成された衝撃波によって加速されるケースがあると言われて、長く議論の的になっている。

陽子や電子、そして重粒子は、電荷を持っているので、太陽風磁場に捉われて地球に飛来する。磁場は大きくスパイラル状に湾曲して地球に到達しているので、発生時間に関する情報が失われる(図2参照)。このため、これらの荷電粒子の観測では、加速のタイミングが、わからない。ここに中性子を観測する意義がある。

太陽からの放射線粒子や中性子を観測する装置を開発し、2009年から国際宇宙ステーション・きぼうの暴露部で、観測を開始した(Obara et al.,2012a,2012b)。図3の右端・先端の部分に飛び出ているのが、宇宙環境計測装置(SEDA)で、中性子を含め、陽子・電子・重粒子を計測した。到来した中性子のエネルギーと到達時間を詳細に分析すると、中性子の生成は、X線の増光のタイミングと一致した(Muraki et al.,2016,Koga et al.,2017)。その後も解析が行われ、中性子はリコネクションで加速された陽子が、太陽大気を叩くときに作られることが判明した。

 国際宇宙ステーション・きぼう暴露部に搭載された宇宙放射線計測装置(SEDA)から、太陽プロトン(陽子)に関する新しい情報も得られている。放出されたコロナガスが、地球に到達するまでの間、その衝撃波面において、陽子を加速し続けている。また、地球の放射線帯であるバンアレン帯については、内帯の異常領域(SAA)が、ここ数十年で、南太平洋上空からブラジルへと西方に移動していること,外帯電子が大きな磁気嵐時に内帯に侵入して内帯の放射線環境を悪化させていることなども、明らかにした(Obara and Matsumoto,2016)。

 私は、1997年から2011年まで、NICT(情報通信研究機構)及びJAXA(宇宙航空研究開発機構)で、宇宙環境計測並びに天気予報業務に参加したが、1986年から1996年まで在籍した文部省宇宙科学研究所(ISAS)での人工衛星を用いた太陽・惑星空間研究が、実務に大いに役に立った。それらの経験を基に、国連の宇宙天気作業部会で、宇宙天気予報ガイドラインを議長としてまとめた事も付記したい(UNREPORT,2013)。現在も、国際宇宙ステーションには宇宙飛行士が滞在し、宇宙活動を続けているが、リアルタイムの宇宙環境データと、太陽フレアや磁気嵐の発生に関する宇宙天気予報を用いながら、安全な宇宙活動を継続している。

(文責 小原隆博(惑星プラズマ・大気研究センター))

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図2:太陽から地球に到達する中性子と荷電粒子の飛跡

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図3:国際宇宙ステーション・きぼう暴露部の先端に取り付けられた宇宙環境計測装置(SEDA) cJAXA提供

【参考文献】

Koga et al., Solar Phys, 292:115, doi 10.1007/s11207-017-1135-y, (2017)

Muraki et al., Solar Phys, 291:1241, doi 10.1007/s11207-016-0887-0, (2016)

Obara et al., Electronics and Communications in Japan, 95(9), 10, doi 10.1002/ecj.11418, (2012a)

Obara et al., Acta Astronautica, 71, 1, doi 10.1016/j.actaastro.2011.08.009, (2012b)

Obara et al., UN COPUOS Report, A/AC.105/C.1/2013/CRP.13, pp.50, (2013)

Obara and Matsumoto, Sun and Geosphere, 11(1), 61, ISSN 2367-8852, (2016)

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